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発達障害の大学生、「売り手市場」でも面接つまずき…大学が就活支援

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発達障害の大学生、「売り手市場」でも面接つまずき…大学が就活支援

大学に入学する発達障害の学生を対象に開かれた「大学生活準備プログラム」(3月、大阪府豊中市の大阪大で)

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 就職活動に臨む発達障害のある大学生を支援しようと、大学が力を入れている。学生優位の「売り手市場」でも、就職につまずくケースが目立つためだ。社会福祉法人と連携して学生に自己分析と進路の選択を促すプログラムを実施したり、企業とともにインターンシップ(就業体験)を企画したりし、能力を生かせる就職につなげようと取り組む。

自己分析指導やインターン…じっくり準備

 兵庫県西宮市の関西学院大で5月中旬、発達障害のある学生3人が、自分の性格や行動をシートに書き込み、カウンセラーとともに分析した。2年生以上が対象の「プレキャリア教育支援プログラム」。3年生から本格化する就職活動に備え、自分を客観的に把握し、どんな仕事が向いているかを考えるのが狙いだ。

 同大学では、発達障害の診断を受け、大学側に支援を求める学生は41人と、3年前の1・5倍に増えた。柔軟な判断が苦手な傾向があり、就活の面接で想定外の質問をされて一言も答えられないという事例もあった。就活での失敗を機に、大学に来なくなる学生もいるという。

 このため、同大学は障害者の就労を支援する社会福祉法人と協力し、3年生以上を対象にしたキャリア教育支援プログラムを2015年度に導入。16年度には2年生以上向けのプログラムも始めた。今年度から同法人の専門職員が週3日、学内で学生の相談に応じている。今春卒業した5人のうち4人が就職、今年も6人が就活中だ。

 大学図書館で図書整理などの仕事をするインターンシップを今月予定しており、先月28日、障害学生の支援を担当する臨床心理士の西岡 崇弘たかひろ さん(31)らが進め方を協議。西岡さんは「職場でどんな配慮があればどんな強みを発揮できるのか、自分で伝えられる力をつけてほしい。それが就職の第一歩になる」と話す。

就職活動以前に大学生活でつまずく学生も…入学前から支援

 就職活動以前に大学生活でつまずく学生も少なくないため、早めに支援を始める大学もある。大阪大は3月、入学前の3日間で高校との違いを学ぶ「大学生活準備プログラム」を初めて企画。阪大を含む7大学の入学予定者計10人が、グループ討議の模擬授業を受けた。

 参加した男子学生(19)は入学後、複雑な履修登録に戸惑った。大学に相談すると、所属学部の担当教員に指導してもらえた。人間関係を築くことが苦手だが、「事前に体験したおかげで、グループワークもこなせている。軌道に乗ってきた」と言い、将来、研究職を目指すという。

 阪大は、民間企業などで1週間程度のインターンシップも企画。終了後、学生と大学、企業の3者で課題を話し合う。受け入れ企業に就職するケースもある。

働きやすい職場かどうか…担当教員が確認

 就職後に目配りする大学も。発達障害の学生が働きやすい職場か確認するため、関西大では支援担当教員らが求人企業の一部に足を運ぶ。富山大は学生が就職した後も原則3年間、相談に乗る。 桶谷文哲おけたにふみのり ・学生支援センター特命講師は「就職先が決まればいいのではなく、続けられるかどうかが重要だ」と語る。

発達障害と診断された大学生、5年で3倍に…就職の壁高く

 日本学生支援機構の2016年度の調査では、発達障害の診断書を持つ大学生(院生含む)は3519人。5年で3倍に増えた。同年度施行の障害者差別解消法で、障害学生への「合理的な配慮」が大学に求められ、支援に向けて把握が進んだことが背景にある。一方、就職の壁は高く、就職した学生は卒業生の34.7%にとどまる。

 ただ、企業の採用意欲は高まりつつある。今春、障害者を一定割合まで雇うよう義務づける法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられ、発達障害者を含む精神障害者が雇用義務の対象に加わったためだ。大妻女子大の小川浩教授(障害者就労支援)は「発達障害は一人ずつ特性が異なる。企業は採用にあたり、それぞれの苦手な部分を見極め、仕事内容や関わり方を工夫して能力を引き出す専門性が求められる」と指摘する。

          ◇

【発達障害】  対人関係を築くのが不得意な「自閉症スペクトラム障害」や、衝動的に行動しがちな「注意欠陥・多動性障害」、読み書きや計算が苦手な「学習障害」などがあり、複数の症状を併発することもある。公立小中学校の通常学級では、児童生徒の6.5%に発達障害の可能性があるという文部科学省の調査もある。

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