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老いをどこで 第2部

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[老いをどこで]地域「超高齢の村」(1)自助と共助 不便感じず

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野菜やりとり 「見守りさん」活躍

[老いをどこで]地域「超高齢の村」(1)自助と共助 不便感じず

近所の一人暮らしの女性宅を訪ね、育てた野菜を届けるまーちゃん(左)(群馬県南牧村で)

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 全国の市区町村で高齢化率が最も高い群馬県 南牧なんもく 村。人口約2000人のうち、65歳以上が6割を超える。連載「老いをどこで」第2部は、高齢化に向き合う地域を取り上げる。3回にわたり、南牧村で超高齢社会を生きるヒントと課題を探る。

 隣町にある私鉄の終着駅から車を走らせると、約10分で南牧村に入る。山の斜面に造られた石垣の上に木造古民家が立ち並ぶ。さらに10分ほど県道を行くと、大きな段々畑が見えてきた。急斜面でトラクターも使えない畑を一人で耕しているのは、村のみんなから「まーちゃん」と呼ばれる三ッ木昌雄さん(91)だ。

 妻に先立たれたまーちゃんはもう10年、一人暮らし。車で40分離れた同県富岡市に暮らす長男の耕一さん(62)に「もう年だから」と頼み込まれ、5月に運転免許の更新を諦めた。

 スーパーや病院がある隣町まで行く村営バスは1日6本。集落には週に1回ほど、村外から行商がやってくる。でも、バスも行商もほとんど使っていない。

 「野菜を生でやるとさ、煮たり漬けたりして持ってきてくれるんだよ」と、まーちゃんは笑う。畑で作ったキャベツやキュウリなど10種類ほどの野菜は、村外に住む4人の子どもの家族や近所の人に全て配っている。お金のためではなく、食べた人に喜んでもらえるのが生きがいだ。

 近所の人は、「まーちゃんが食うくらい一つかみ分、多く作ればいいだけだから」と作ったおかずをお裾分けする。だから買い物の必要はほとんどない。足りない日用品は毎週末、耕一さん夫婦が届けてくれる。

 畑仕事のおかげか、病気知らず。病院通いは3か月に1回の目の検診だけだ。血圧計で毎晩、自分で血圧を測って健康管理している。

 「住めば都よ」。まーちゃんから野菜を受け取った近所の一人暮らしの高齢女性もそう話す。

 村内にはバスが週1回しか来ない集落もある。唯一の診療所が開くのは週に2日。買い物も通院も一見、とてつもなく不便と思われる村では、自家栽培の野菜やお裾分け、近所の人や村外の子どもたちの支援など、「自助」「共助」の力で多くの高齢者が不便を感じずに暮らしている。

 実際、福祉デザイン研究所(所長=川村匡由・武蔵野大名誉教授)が2010年に村の全世帯に実施したアンケートでも、7割が買い物や通院について「特に困難でない」と回答している。

 村も、昔ながらの住民のつながりを高齢者施策に生かしている。「見守りさん」と呼ばれる制度で、村内に約400人いる一人暮らし高齢者の半数が、近所の親しい人を見守りさんとして村の社会福祉協議会に届け出ている。見守りさんは、日々の安否確認を担い、離れて住む子どもの電話番号などを把握し、ボランティア保険にも入れる。

 まーちゃんの見守りさんは、近所に夫婦2人で暮らす三ッ木七郎さん(80)だ。自身も畑仕事を続けていて、「キュウリの芽が出たよ」などと、情報交換をしている。「近所の人も家族同様に付き合ってくれるんだ。一日中、誰とも話さない日なんてないなぁ」とまーちゃんは目を細める。

 それでも、長男の耕一さん夫婦は、「うちで一緒に住んだ方がとも思うけれど……」と心配する。村で暮らし続けたいまーちゃんは、心配を減らそうと、「元気だよ」と自分から毎晩のように電話する。夫婦は、「父が一番元気でいられるのがここだから」と、できる限り、村での暮らしを支えようと考えている。

人口1911人、65歳以上61.6%

 南牧村はかつて、コンニャクイモ栽培や養蚕などで栄え、1955年には1万人以上が暮らしていた。しかし、多くの山村地域と同様、平地の少ない村は農業の機械化や工場の誘致が難しく、若者は仕事を求めて村外へ流出。今年4月の人口は1911人。65歳以上が人口に占める割合(高齢化率)は61.6%になる。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、高齢化率が50%以上の市区町村は2015年では15(全体の0.9%)のみだが、45年には465(27.6%)に急増。日本全体の高齢化率も36.8%まで上昇する。高齢化が全国でいち早く進んでいる南牧村は、住民同士の助けあいなど、多くの地域の将来像を描くうえでヒントになり得る。

 高齢化率が50%を超えると「限界自治体」と呼ばれるが、意外にも村に暮らす多くの住民が買い物や通院に困難を感じていなかった。同村の生活実態を調査した武蔵野大の川村名誉教授は、「南牧村の調査は、超高齢社会も地域の支え合いで乗り越えうることを示唆している。今後、医療、介護サービスが不足する大都市は地域のつながりが弱いため、支え合いの仕組みを作る必要がある。過疎地も共助を維持できるよう、対策を講じるべきだ」としている。

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