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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

コラム

はしか対策…日本で流行が止まらない理由

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 今春、沖縄県に始まって、愛知県、東京都町田市など各地で麻疹(はしか)の患者が確認されています。ぼくはニュースを見るたびに、10年前の2008年、神戸大学に赴任した時のことを思い出します。

 この年、キャンパスでは麻疹が流行しました。学内の対策会議の内容を聞いた時、耳を疑いました。「07年に麻疹が流行したときは休校した。今回も休校したい」――。

 ぼくは「待ってくれ」と言いました。「同じ対策をとれば、来年以降も同じ問題が起きるではないか」

空気感染…対策はワクチン予防接種の徹底だけ

 麻疹は空気を介して感染するウイルス感染症で、たくさんの人にうつります。麻疹ウイルスのように空気感染する病原体は他にはほとんどありません。手洗いやマスク着用などの、よく言われる対策ではまず効果はありません。「水際対策」と称して、外国からの「持ち込み」を入国時に見つけようとしますが、麻疹にはほぼ無意味です。現に「水際対策」の効果を示すデータもないですし、そんな対策を取る国も、ほかに知りません。感染症に関するポスターが空港の壁にベタベタ貼ってあるのは、ぼくが知る限り日本だけです。

 では、どうすればよいかというと、唯一の手段は予防接種の徹底です。幸い、麻疹ワクチンは2回接種することで高い効果を期待できます。

「麻疹排除」のはずが…海外渡航者がウイルス持ち込み

 ここで、日本における麻疹対策の変遷を説明しましょう。

 日本は、2001年には20万人以上の麻疹患者を出し、「麻疹輸出国」の汚名を着せられました。その後、07年に「麻しんに関する特定感染症予防指針」が出されて対策が強化されました。

 麻疹ワクチンは2回接種します。1歳児の1回目接種、小学校就学前の2回目の接種です。08年から13年までの時限措置として、麻疹抗体保有率が低い人たちのうち、中学1年生相当と高校3年生相当の2グループに追加の接種を行い、国内からの「麻疹排除」を目指しました。その対策は一定の成果を上げ、15年に日本は麻疹排除状態にあると世界保健機関(WHO)に認定されました。

 しかし、翌16年には関西国際空港をはじめ多数の地域で、17年には山形県などで、さらに今年は沖縄県や愛知県などで麻疹のアウトブレイク(流行)が起きています。海外からの渡航者が麻疹ウイルスを持ち込んだためです。日本では麻疹抗体を十分に持っていない人たちがまだまだ多いので、外国からウイルスが持ち込まれれば、いつでもどこでも麻疹の流行が起きるのです。

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岩田健太郎(いわた けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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2件 のコメント

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社会防衛意識の欠如

たそがれ権兵衛

ワクチンなどでの予防には2つのタイプがあると思います。 一つはおたふく風邪や子宮頸ガン、日本脳炎のように重篤な後遺症の危険を持つ病気に対して少し...

ワクチンなどでの予防には2つのタイプがあると思います。
一つはおたふく風邪や子宮頸ガン、日本脳炎のように重篤な後遺症の危険を持つ病気に対して少しの予防措置で回避できる個人を主体にした防衛策。
もう一つは感染力が強くて社会全体で統一した対策が必要な伝染病、麻疹や結核はこれにあたるでしょう。
後者の場合はそれこそ社会が早い段階から漏れなく予防接種を受けなければならないのに、どうも日本は対策導入が遅れたり個人の自由に委ねたりする傾向がないでしょうか。国を越えて人間が頻繁に往来する今日、日本だけが独自のルールでは世界から非難の的にもなりかねません。行政当局はWHOなどが定める世界標準の徹底を図るべきです。

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医師は予防の専門家でないから?!

みんちゅ

公衆衛生の父とされるジョンスノーは1850年代の医師で、コレラ(コッホが病原体であるコレラ菌を発見するのは1890年前後)が水系感染することをデ...

公衆衛生の父とされるジョンスノーは1850年代の医師で、コレラ(コッホが病原体であるコレラ菌を発見するのは1890年前後)が水系感染することをデータを持って示し、汚染された井戸の使用を禁止することで、新規患者の発生を防いだ功績が有名です。

ところで、医師は病気の専門家であっても、健康科学・公衆衛生学の専門家ではないことが通例です。特に日本国においては、白衣を着て病院・医療機関で待ち構えており、どこかで発生した病気の患者を「治す」役割のみを求められているような印象を受けます。

唐代の中国には「上医は国を癒す・医す」という言葉があるようですが、新聞に記事を書かせてもらえるような発言力のありそうな大学の先生が「わかっているのに、なぜ、その対策を取れないのでしょうか。ぼくはいつも不思議に思っているのです。」などと、本質的な対策のためにupstreamに働きかけができないのは、「感染症内科」という狭い世界に閉じこもっているからでしょうか。

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