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再発した卵巣がんに新薬「リムパーザ」…がん細胞の修復妨げ死滅促進

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再発した卵巣がんに新薬「リムパーザ」…がん細胞の修復妨げ死滅促進
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 新潟県の農業A子さん(62)は6年前、卵巣がんと診断され、手術や抗がん剤治療を受けたが再発した。今年4月に保険適用された飲み薬の新薬「リムパーザ」(商品名)での治療を新潟大学病院(新潟市)で始めた。「副作用もほとんどなく、体調の大きな変化もない。医療の進歩で新しい治療が受けられてありがたい」と話す。(石塚人生)

今春から保険適用

 卵巣がんは50歳代前半から60歳代前半に発症しやすい。発症者は年約1万人。腹囲が大きくなることや、不正出血、頻尿などがきっかけで見つかるが、自覚症状がないことも多い。

 治療の基本は、卵巣や子宮などの摘出手術後、抗がん剤などの化学療法を受けることだ。卵巣がんは抗がん剤が効きやすいとされる。ただ、再発も多い。再発後の薬は限られており、新薬の効果が注目される。

 リムパーザは分子標的薬というタイプの薬で、がん細胞を狙い撃ちする。ほかの薬を使って6か月以上再発が見られないなど、化学療法に一定の効果が認められた患者が使える。再発後、通常の抗がん剤治療で効果があれば、リムパーザの服用に切り替え、効果が見られるうちは飲み続ける。

 海外での臨床試験では、病状が悪化せずに生活できる期間が、8・4か月(中央値)に延び、従来の抗がん剤の約2倍になった。再発後、1年以上使えた患者は40%に上り、5年以上使えた患者も13%いた。

遺伝子変異に対応

 この薬は元々、BRCAという遺伝子に変異がある遺伝性乳がん・卵巣がんの患者の治療を念頭に開発された。BRCAはDNAの修復に関わる遺伝子の代表格で、らせん状のDNAの鎖が2本とも切れている時に働く。しかし変異があると修復できなくなる。

 リムパーザは、DNAの1本の鎖が切れた時に修復するよう働く酵素PARP(パープ)の働きを邪魔する。PARPが機能しないと、DNAが複製する過程で結果的に二本鎖の切断が起きる。

 卵巣がんではBRCA以外にも二本鎖切断の修復に関わる遺伝子変異が多く、二本鎖の修復が行われないままだと、細胞分裂ができず、がん細胞が死滅する。通常の細胞はDNAの正常な修復機構があり、薬の影響は少ないとみられる。

 慈恵医科大学産婦人科主任教授の岡本愛光さん(58)は「BRCAの変異がある患者に限らず、幅広い卵巣がんに対して効果を期待できる」と話す。

 新潟大ではA子さんら4人の再発卵巣がん患者が新薬を使い続けている。吐き気や疲労感などの副作用が出ることもあるが、吐き気止めなどを併用して問題なく服用できているという。

 1日2回、300ミリ・グラムずつの服用が基本だ。A子さんは「新薬は錠剤なので続けやすい」と話す。ただ副作用とみられる白血病の報告もあり、患者団体は、適正使用を呼びかけるよう国に求めている。

 薬価は標準的な使い方で年約850万円だが、高額療養費制度により自己負担が大幅に軽減される。

 新潟大産婦人科主任教授の榎本隆之さん(61)は「遺伝子の修復機構をターゲットにした新薬の開発が相次いでおり、卵巣がんの治療が大きく進歩する可能性がある」と話す。

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