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遺贈、思いを託す…単身高齢者増で広がり

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 人生の終わりに備える“終活”が関心を集める中、死後に自分の財産を非営利団体などに寄付する形で 遺贈いぞう をする動きが広がっている。一人暮らしの高齢者の増加などを背景に拡大が見込まれ、相談窓口を開設する団体も出てきた。(植田優美)

  ■数千万円寄付も

 車いすを利用する人らの生活を支える介助犬を育成する「日本介助犬協会」(横浜市)では、2009年以降、18件の遺贈を受けた。数百万~数千万円を寄付した人もいたという。感謝の気持ちを形で残そうと、協会では2年前から、愛知県内にある訓練施設に、遺贈者の名前のイニシャルを入れた犬形のプレートを飾っている。担当者は「遺贈の額よりも、思いを託す先に選んでいただけること自体がありがたい」と話す。

  ■震災以降に関心

 国内で行われている遺贈の規模は分かっていないが、寄付行為への関心は、11年の東日本大震災以降、高まっているとされる。

 認定NPO法人「国境なき医師団日本」(東京)が17年、全国の15~69歳の男女1000人に行った終活と遺贈に関する意識調査では、遺贈に前向きな人の割合は61・6%だった。

 背景には単身世帯の増加など家族形態の変化がある。最高裁判所によると、相続されずに国庫に入る個人の財産は16年度で約440億円に上り、5年間で約65億円増えた。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の一人暮らし世帯は15年に約592万人で、35年には760万人に達すると見込まれている。

  ■相談窓口設置

 福岡市社会福祉協議会は、遺贈について紹介するパンフレットを独自で作成。今年度から月1回の終活相談窓口で遺贈に関する相談受け付けも始めた。

 16年には遺贈寄付を推進する一般社団法人「全国レガシーギフト協会」(東京)が結成された。加盟する公益財団法人「佐賀未来創造基金」(佐賀市)など16団体が相談窓口を設置。遺贈先の提案や専門家の紹介をしている。

 公益財団法人「日本財団」(東京)の窓口には16年4月の開設以降、約2550件の相談が寄せられたという。

 同協会の山北洋二理事は、「遺産を社会貢献に使いたいと考えるシニア層は多く、今後遺贈は拡大する」と見込む。ただ、遺贈先には知名度のある大きな団体が選ばれる傾向にあるという。「相談窓口を増やし、地域の小さな団体の受け入れ態勢も整えて、遺贈寄付の“地産地消”を進めたい」と話す。

 遺贈寄付の主な相談窓口
▽全国レガシーギフト協会(東京事務所)
 03・6402・5610

▽日本財団遺贈寄付サポートセンター
0120・331・531

▽佐賀未来創造基金
0952・26・2228

「社会へ恩返し。子どもたちのため」…生活支援受ける72歳

遺贈、思いを託す…単身高齢者増で広がり

遺贈を決めた河室さん。「社会のために行動したという実感があり、今のほうが生き生きしています」と話す(福岡市中央区で)

 福岡市の河室エツ子さん(72)は2年前、遺贈の手続きをした。万が一の時には残った預金を、生活支援を受けている市社会福祉協議会と、親と暮らせない子どもの養育に携わる市内のNPO法人に寄付することになっている。

 59歳の時に、約30年連れ添った夫を亡くした。子どもはおらず、一人暮らし。視覚障害があり、ガイドヘルパーなどの支援を受けている。「私の暮らしは社会に支えられている。恩返しがしたい」と思ったという。

 葬儀や家財処分などを引き受けてくれる市社協の事業に申し込んだ際に、遺産については公証役場で公正証書遺言を作成するように勧められた。弁護士とも相談して、遺言に記した。

 遺贈先の一つに子どものための団体を選んだのは、将来を担う子どもたちの力になりたいと思ったからだ。「元気に成長する姿を想像するのが楽しみ。社会の役に立てると思うと、暮らしに張り合いが出ました」と河室さんはほほ笑む。

遺言紛失に備え 公正証書作成を

 遺贈は、自筆の遺言でも可能だが、紛失などのケースも想定される。

 遺贈寄付に詳しい樽本哲弁護士(第一東京弁護士会)は、「遺志がきちんと生かされるよう、紛失の恐れがない公正証書遺言を作成し、寄付への思いを『付言事項』に記しておくとよい」と話す。子などの相続人には一定の額を相続する「遺留分」という権利があり、遺贈先とトラブルにならないような配慮が求められる。遺贈先が困らないように、先方に直接連絡して受け入れ態勢を確認することも必要だ。

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