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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

医療・健康・介護のコラム

杏里とあかねの「認知症介護あるある」(下) “下の世話”すんなり受け入れた父×恥じらい隠した義母

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漫画・日野あかね

 この連載の漫画を担当してくださっている日野あかねさんとの「認知症介護あるある」トークの最後は、認知症介護で(たぶん)みんなが気になる「アノ話」についてです。

 それはスバリ、「 (しも) の世話」について。認知症になったすべての人がそうだとは言えませんが、多くのケースで症状が進むと、当人はもちろん、介護する人にも「下の世話」という大きな壁にぶち当たるときがやってきます。

すんなり「オムツ」受け入れた父さん

 といいつつも、実は父さんはその壁をすんなりと越えてしまいました。その理由は、私たちが怖いから……。

 父さんは比較的早い段階から、排せつを失敗するようになりました。「どうしても間に合わなかった」「ちょっと漏れただけ」と、自分では片付けずに言い訳をします。

 でも、椅子の下までビショビショになっているなど、明らかに父さんの言い訳とは異なる光景が目の前に広がっています。私や母さんの気持ちがその現実に追い付かず、汚れた床や下着を見るたびに怒りが大爆発。そんな日々に疲れた母さんが、ある日、「もう、これはいて!」と父さんにリハビリパンツ(パンツ型のオムツ)を渡しました。

 「嫌がるだろうな」という私たちの予想に反し、怒られることに疲れ果てた父さんは、こちらが拍子抜けするほどあっさりとソレをはき、当たり前のように使うようになったのです。

 我が家の場合、父さんが粗相をするたびに怒り怒られと、父さんも私たちもすごいパワーを使います。そうやってお互いに疲弊するのであれば、もっと早くからオムツを採用すればよかったと思うのが正直なところです。

 とは言っても、娘としてまだ50代の父親がオムツをはく姿を見たときはなんとも言えない気持ちになり、そのお世話に慣れるまで、それなりの時間が掛かりました。母さんも自らが勧めたにも関わらず、しばらく戸惑っていました。実は父さんよりも私たちの方が「下の世話」に壁をもっていたのかもしれません。

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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