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オンライン診療 国が指針…通院負担軽減 1700施設で

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オンライン診療 国が指針…通院負担軽減 1700施設で

 スマートフォンなど情報通信技術を使い、離れた場所にいる患者を診る「オンライン診療」。国が今春、初めてルールを作るなど安心して利用できる環境は整いつつある。通院の負担軽減が期待されるが、有効性と安全性に関する科学的な根拠の不足など課題もある。

 「問題ないですね。順調ですよ」。長野県上田市の神林祐子さん(55)が、右手に持つスマートフォンに向かって最近測った血圧の値を伝えると、画面に映る医師の竹村隆広さんから、そんな言葉が返ってきた。

 自宅にいる神林さんと、佐久心臓血圧クリニック(長野県佐久市)の診察室にいる竹村さんとの間で行われたオンライン診療の一コマだ。高血圧の診察は毎月1回。この日は事前に決めた時間に竹村さんがパソコンから神林さんのスマホを呼び出し、5分で終了。翌日、郵送された処方箋を近くの薬局に持ち込んで薬を受け取った。

 これまで神林さんは、車で往復80分かけて同クリニックに通院していた。冬は雪道となり通院しにくいこともあった。竹村さんの勧めでオンライン診療を取り入れたのは1月。それ以降、対面診療と組み合わせる形をとっている。

 「こんなに簡単とは驚いた。通院の負担が減るのは本当に助かる」と神林さんは喜ぶ。竹村さんは「症状が安定していれば、患者さんの通院負担を減らせる便利なツール」と話す。昨秋に導入したばかりで、取り入れる患者は神林さんら数人にとどまるが、潜在的な需要は大きいと見込む。

 診療は本来、医師と患者の対面が原則。オンライン診療は長く、へき地や離島など一部で認められているだけだった。

 風向きが変わったのは、厚生労働省が全国での実施を事実上、解禁した2015年。これを機に、オンライン診療のアプリを作る業者が事業を加速化させて拡大した。

 ただし、転売目的が疑われるのに、医師がオンライン診療のみで睡眠薬を処方するなどの問題も指摘された。適切な普及につなげようと、厚労省は今春、医師が守るべき指針を作った。患者と合意の上で実施する、初診は対面診療を原則とする、具体的な治療内容など診療計画を作る――などを医師に求めた。

 さらに今春、オンライン診療に初めて診療報酬(医療の公定価格)がついた。対面診療よりも点数は低いが、普及を後押しする可能性がある。

 オンライン診療のアプリを作る複数の業者によると、実施施設は少なくとも1700施設以上。今後はさらに増える見通しだという。

デメリット理解して受診を

 オンライン診療の課題の一つは、対面診療と比べた場合、有効性と安全性に関する科学的な根拠が不足している点だ。

 医師は本来、五感をフル活用して診療にあたる。しかし、スマートフォンなどでは患者の吐く息のにおいや、皮膚の硬さなど病状の変化を示唆する情報は得られず、病気を見落とす恐れがある。今後はオンライン診療のデータを蓄積し、有効性と安全性に関する科学的な根拠を積み上げる必要がある。

 指針をつくる有識者検討会の座長で、医療情報システム開発センター(東京都)理事長の山本隆一さんは「オンライン診療は便利だし、医師不足を補う可能性がある。ただし、触診ができないなど病気を見落とす恐れもある。利点と問題点を理解した上で受診を検討してほしい」と話している。

 (加納昭彦)

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