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解説

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朝丘雪路さんを襲ったアルツハイマー型認知症 死に至るケースも

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朝丘雪路さんを襲ったアルツハイマー型認知症は「死に至る病」

 女優で歌手の朝丘雪路さんが4月27日、アルツハイマー型認知症が原因で亡くなった。アルツハイマー型認知症は「物忘れ」のイメージが強く、死因として聞くことはあまりないが、実際には病気の進行により、死の原因となることもある。

徐々に進行し、寝たきりに

 アルツハイマー型認知症は、脳に「アミロイドβ」、続いて「タウ」というたんぱく質が異常にたまり、やがて神経ネットワークがダメージを受けて発症する。

 群馬大名誉教授の山口晴保・認知症介護研究・研修東京センター長によると、アミロイドβがたまり始めてから20年ほどで、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)になる。軽い物忘れが見られるようになるが、生活には大きな支障はない。この状態が5年ほど続く。

 病気が進むと、記憶力がさらに低下する。時間が分からなくなるなどの症状も表れ、買い物や料理、掃除などの家事を段取りよく行うことが難しくなってくると、初期(軽度)のアルツハイマー型認知症と診断される。

 さらに進んで中期(中等度)になると、自分がどこにいるかが分からなくなったり、ほんの数秒前のことを忘れてしまったりする。物を盗られたという妄想や 徘徊はいかい などが起きることもあり、着替えや入浴といった身の回りのことをするのに手助けが必要になる。

 進行期(重度)になると、家族や親しい人の顔が分からなくなったりする。

 終末期には、体の動きをつかさどる脳領域にまで病変が広がり、手足を動かすことができなくなって寝たきりになる。そのため、全身の機能が低下し、循環器・呼吸器疾患などを起こしやすくなる。ものを飲み込む力もなくなるため、飲食物やつばが気管に入って肺が炎症を起こす「 誤嚥ごえん 性肺炎」で亡くなることが多い。初期の症状が表れてから10~15年ほどだ。

「老衰」「誤嚥性肺炎」 認知症が原因のケースも

 日本では、認知症に対する偏見などもあり、これまでは医師が遺族に配慮して、「老衰」や「誤嚥性肺炎」を死因として死亡診断書に記載するケースが多かった。近年は、そうした場合に「アルツハイマー型認知症」を死因とするケースが少しずつ増えてきて、直近の2016年の統計では、女性の死因の第10位に入っている。それでもなお、「死因を『肺炎』としている中に、実際にはアルツハイマー型認知症が原因というケースが、かなり含まれるのではないか」と、専門家の間では見られている。

 山口センター長は、「アルツハイマー型認知症はゆっくりと進むので、過度に恐れる必要はない。いつか死が訪れるということを患者や家族が理解していれば、終末期にどのような医療を受けて、どう過ごすかを話し合っておくことができる」と指摘している。(飯田祐子 ヨミドクター)

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