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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

[インタビュー]18トリソミーの子を持つ親から③――娘の存在を隠す自分を脱し、写真展に参加 「障害=不幸」じゃない!

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 前回に続き、写真を通じて染色体異常の18トリソミーを知ってもらう会「Team18」代表の岸本太一さんに聞きました。

「子どもは?」と聞かれ、言葉を濁した

―― 18トリソミーの子を育てることで、つらいこともあったのではないでしょうか?

 つらい時期はありました。Facebookで初めて娘の心咲(みさき)のことを書いたのが、1歳半のときです。それまでは、周りに18トリソミーであることを言えませんでした。

【名畑文巨のまなざし】
ポジティブエナジーズ(その1) 5月16日~21日にロンドンで写真展「ポジティブエナジーズ」を開催しました。世界をめぐり撮影したダウン症の子どもたちは、みなそのタイトル通り、ポジティブなエネルギーにあふれていました。はるなちゃんは、一番最初に撮影した6歳の女の子です。普段の子どもの撮影では、おもちゃであやして生き生きとした表情を引き出すのですが、彼女は、こちらが何もしなくても最初から全開だったことに衝撃を受けました。京都府にて

 「子どもは?」と聞かれても、年齢だけ言って、すぐ話を変えていました。言うのは簡単でも、「その後、言われた人はきっと気を使うだろうな」「心ないことを言われるんじゃないかな」と考えている自分がいたからです。自分の都合で娘の存在を隠してしまう自分をいつも憎みました。

―― しかし、心咲ちゃんが可愛(かわい)いわけですよね?

 本当はすごく自慢したかったのです。幸せな暮らしを伝えたかったのです。生きられないと言われて生まれた子が、もうすぐ2歳。生後2か月で心臓の手術をし、長く入院し、酸素を使い、人工呼吸器を使い、口には栄養チューブを入れ、何回もヤマ場を乗り越えながら全力で生きている娘。生命が誕生すること、生きることが奇跡であること、娘はいつも命の尊さを教えてくれました。

 友達や兄妹たちがFacebookを利用して自身の子どもの様子を伝えたり、人とのつながりの大切さをつづったりしているのを見て、自分も自慢の娘をみんなに知ってもらいたいと思うようになりました。正直、心咲が長く生きるとは考えていなくて、今、一緒にいられる時間を大切にしたい、今を伝えたい、そう思いました。

みんなに見守られ、今の心咲がいる

―― 隠していたわが子をみんなに知ってもらって、どうでした?

 障害があることで、なぜ近しい友人や先輩後輩にまで子どもの話ができなくなるのか。なぜ隠さなければならないのか。それは、生き方を比較していたからかもしれません。

 でも、自分の殻を破った後は、とても楽になりました。言えたことの安堵(あんど)感、もしくは達成感でしょうか。

 心咲の存在は、みんなに広がりました。みなさんに支えられ、見守られて、今の心咲がいます。本当にありがたいことです。

―― 医療的なケアには手がかかります。それをつらいとは思いませんか?

 医療的ケアがあることや、介助が必要なこと、やることが多いことに対して苦しいと感じることはありません。新しいケアが増えたときは大変ですが、医療的ケアがあるのが日常なので大丈夫です。周りからは大変に見えるかもしれませんが、自分たちはとても淡々とやっています。生まれたときから、それが心咲の毎日なので、そこに苦しさはないです。

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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

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松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)など。2017年11月、『子どもの病気 常識のウソ』(中公新書ラクレ)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

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