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僕、認知症です~丹野智文44歳のノート

医療・健康・介護のコラム

国内初の認知症当事者団体に参加…堂々と語る姿に圧倒され

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子育て世代の当事者を代弁

 それから間もなく、当事者の全国組織「日本認知症ワーキンググループ」(JDWG、現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)が設立されることになりました。私も藤田さんから、「私は看護師の仕事をやめてしまった。仕事について語れるのは、今も働いている丹野さんしかいない。ぜひ一緒にやりましょう」と言われて心が動き、参加を決めました。

 同じ認知症でも、定年後の人と子育て中の人では、必要な支援は違います。メンバーの多くが65歳未満で発症した若年性認知症の人ですが、その中でも、当時53歳だった藤田さんはひときわ若々しく見えました。発症したときは40代半ばだったそうで、まだ成人前のお子さんたちがいたのです。「子どもたちをちゃんと育てていかねばならない」という強い思いは、私と同じなのだと感じました。そして、子育て中の全国の当事者の声を代弁して、どういう支援が必要なのかを伝えることが、みんなと一緒ならできるのではと思いました。

病気をオープンにして発信したい

 同年10月のJDWG設立時の記者会見には、国内初の認知症当事者による団体ということで、多くのメディアが集まりました。しかし私自身は、この時はまだ、名前や顔を出して取材に応じる決心がつきませんでした。ですから、会見には出席せず、実名は出さないようお願いしていたのです。

 ところが、「設立メンバーは、40~80代」と書かれた新聞記事を見て、全国の「認知症の人と家族の会」の関係者から、「丹野さん、新しくできた団体に参加したんだね」と言われました。

 当時は、「家族の会」でも40代の当事者は珍しく、私のことだと分かってしまったのです。「ありゃー」と思う一方で、「それでもいいかな」という気持ちもありました。

 藤田さんや他のメンバーとの出会いを通して、当事者が自分の言葉で発信していくことの大切さを感じていました。「そのためには、病気のことを広くオープンにした方がいいのではないか」という思いが、私の中で大きくなっていたのです。その後、家族に相談し、講演活動を本格的に始めたのは、昨年11月28日公開のコラムにも記した通りです。

全国から、地域から…それぞれ目指す「安心して暮らせる社会」

 JDWGは、当事者の意見を集めて厚労省へ提案したり、講演会や報道などを通じて、当事者の声を発信したりすることが主な活動です。成果の一つとして、15年1月に策定された認知症の国家戦略「新オレンジプラン」に、「本人の視点」を政策に取り入れることが明記され、「画期的」と評価されました。その後も、認知症の人と運転免許に関する「提案」を発表するなどの活動を続けています。

 厚労省や全国的な組織に働きかけるために、JDWGの役割は重要です。一方で、「認知症になっても安心して暮らせる社会をつくるには、それぞれの地域に合ったやり方で、自分たちの周りを良くしていかなくては」という思いもありました。そこで、宮城県でも当事者のワーキンググループをつくりました。

 県内では、15年5月にスタートした相談窓口「おれんじドア」が入り口となって、当事者を「家族の会」のつどいや地域の認知症カフェなどの「居場所」へとつなぐ流れができていました。その延長として、当事者同士の話し合いと発信の場となるワーキンググループが生まれたのです。地元での当事者活動が、ここまで発展してきたのだと思うと、何だか感慨深いです。

 ワーキンググループの本格的な活動はこれからですが、認知症の人が日々、困っていることを一つひとつ改善していくような提案をしていけたらいいなと思っています。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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