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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

コラム

日本人の睡眠時間は先進諸国で最下位! 平日の寝不足は認知症、うつのリスクにも

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。第1回目の今回は「人は何時間寝るべきか」という最もオーソドックな疑問を取り上げます。講演会でも必ずと言ってよいほどいただく質問です。

「必要睡眠時間」には大きな個人差が

 その人にとって十分な睡眠時間とは、日中にたまった疲労や心身のダメージを回復するのに必要な睡眠時間です。これを「必要睡眠時間」と呼びます。必要睡眠時間には大きな個人差があるため「〇時間以上眠れば大丈夫」という万人に通用する基準がない、というのが科学的に正しい答えです。

 以前、私たちが健康な20代の若者十数名の必要睡眠時間を測定したところ、7時間余りの短めの睡眠で十分な人から、9時間を大きく上回る長めの睡眠が必要な人まで2時間以上の個人差がありました。多人数で調べれば、もっと個人差は広がるでしょう。

20代に必要なのは平均8時間30分

 「自分の必要睡眠時間もぜひ調べてほしい」というリクエストもよくいただきます。ですが、そのためには、特殊な検査室の中で1週間以上の間、睡眠中の脳波を精密に測定しなければいけません。残念ながら簡単にお調べすることができないのです。

 そこで、一つの目安をお示しします。20代の必要睡眠時間は平均8時間30分前後、そして年齢ととともに徐々に短くなる、とお考えください。高齢者で必要睡眠時間を測定した研究はありませんが、さまざまな研究データから70代では7時間弱まで短くなると予想されています。

 ただし、繰り返しになりますが、個人差によるばらつきがあるので高齢者の方でも若者のように長く眠れる人もいれば、5時間を切っても大丈夫な人までまちまちです。

「短くても健康」な人は長期的な蓄積が心配

 ここまで解説すると、睡眠に詳しい方々からは「別の書籍に書いてある標準的睡眠時間はもっと短い」「8時間以上眠れるのは中高生くらいまで、と三島先生自身も話していたではないか」などと、厳しい突っ込みをいただくかもしれません。

 「標準的睡眠時間」と、先にお話しした必要睡眠時間は違います。標準的睡眠時間とは、健康な人が実生活で眠っている時間のことです。多くの書籍には、下に示した各年代ごとの標準的睡眠時間のグラフが載っています。私自身、自著で何度も紹介しました。このデータはOhayonという米国の睡眠研究者が、過去に報告されている多くの実験データをまとめたものです。図を見てもお分かりのように、これまで「健康な人」の標準的睡眠時間は20代で約7時間半、70代では6時間弱とされてきました。必要睡眠時間よりも1時間ほど短いですね。

*各年代の健康な人の標準的睡眠時間。Ohayonらのデータ(2004)から筆者が作成

 ただし、この標準的睡眠時間は普段の睡眠習慣に合わせ、被験者を検査室で寝かせて測定したものです。測定期間もせいぜい2、3日。したがって必ずしも、その人が本当に必要とする睡眠時間を測定できているわけではありません。いわば健康な人のリアルワールドでの睡眠時間なのです。

 「必要睡眠時間よりも短くたって、健康に過ごしているのだからそれでいいじゃないか」という意見も聞きます。確かに標準的睡眠時間を確保できている人は、短期的には大きな問題は起きないでしょう。とはいえ、わずかながらでも睡眠不足が日々積み重ねられていることは間違いありません。むしろ、わずかであるがゆえに長期間にわたって続けてしまいます。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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