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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

精神科医療と生活保護の日々…「働きたい」願いかなわず――小林エリコさんに聞く(中)

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 前回に続いて、『この地獄を生きるのだ』という本を書いた小林エリコさん(40)へのインタビューです。精神科病院、精神科デイケア、生活保護の体験を中心に語ってもらいます。

最初の自殺未遂で精神科病院へ

――21歳の時の最初の自殺未遂では、大学病院へ救急搬送された後、精神科病院へ入院したんですね。

 「入院はつらかったですね。身体拘束は点滴の時だけでしたが、2~3週間は病棟の外へ一切、出られなかった。病棟の中はボロボロで、テレビは壊れていて、ソファも中の綿が出ている。ごはんもまずい。職員の態度はひどくはないけど、看護師は、ほとんど患者とかかわりを持たなかったですね。体の不調を訴えたら、説明もなく注射を打たれました」

――今の話を聞いた私の印象は、良くはないけど、そう悪くもない病院という感じですね。1990年代までは、患者を閉じ込めて支配しようとする精神科病院があちこちにあり、職員の暴行で患者が死亡する事件なども起きました。その後、全体として改善はしてきたんですが、この10年余りは、逆戻りしている傾向がありますね。閉鎖病棟が多くなり、身体拘束を受けるケースも増えました。改築で、きれいになった病院は多いけれど、患者の人権状況は再び悪くなってきたと思います。

早く退院するために「よい患者」になる

 「私は1週間か10日で退院できると思ってたんです。ところが、ほかの患者さんに話を聞くと、5年入院しているというので、怖くなった。精神科では長期入院が当たり前で、ずっと出られない人がいるなんて、知らなかったんです。ここから脱出するには、おとなしくしてたほうがいいと考えて、トラブルを起こさず、看護師に迷惑をかけないようにして、3か月で退院できました」

――そこで過剰に適応して、自分の意思を抑えるようになると、退院の意欲、生活の意欲まで薄れてしまうんですね。だから、入院が長引いてしまう。そうやって病院職員に管理される生活を続けていると、さらに意欲が低下していく。精神科で10年、20年と入院している人が珍しくないのは、病状というより、そういう悪循環が大きいと私は思います。

 「確かに長いこといたら、退院しようという気持ちがなくなりそうですね。5年以上入院している人とか、どうでもよくなっちゃうかもしれませんね」

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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