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将来は高収入に!? 生きる力=非認知スキルはスポーツで伸びる! 東京成徳大で実証研究

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 人が生きるために必要なのは、偏差値や営業成績のように数値化できる能力だけではない。数字で表しにくい自制心、忍耐力などは「非認知スキル(能力)」と呼ばれ、生きる力として、近年、注目されている。非認知スキルとスポーツの関係に着目したのが、東京成徳大学助教の夏原隆之さん(健康・スポーツ心理学科)だ。少年期のスポーツ活動によって、非認知スキルが伸びる可能性が高いことを実証研究で明らかにした。

非認知スキルとは?

 非認知スキルという言葉は、2000年にノーベル経済学賞を受賞した米国シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授の研究を機に世界中に広まった。

 ヘックマン教授は約40年にわたり、個人の成長過程を追う大規模調査を行った。それによると、同じIQ(知能指数)でも、自発性などを育む幼児教育を受けた子どもの方が、そうでない子に比べ、高校卒業率や所得が高いことがわかった。学力といった認知スキルよりも、非認知スキルの方が人間形成に大きな役割を果たしている可能性が指摘されたのだ。

 夏原さんらは昨年度、笹川スポーツ財団の助成金を受けて、スポーツ活動の影響をテーマに研究に取り組んだ。その成果を今年4月、都内で発表した=写真=。

 調査は、東京、埼玉、千葉、神奈川、新潟、静岡、奈良の7都県の小学3年~中学3年の男女1581人を対象に質問用紙を配布。地域や学校でのクラブ活動など、スポーツ経験の有無を確認したうえで、様々な聞き方で、非認知スキルがどの程度あるのか探った。

 非認知スキルは、6項目に分けて評価した。たとえば、「忍耐力」については、米国などで使われている「Grit(グリット=やり抜く力)尺度」と呼ばれる評価法を使用。「頑張りやである」「困難にめげない」といった質問を設け、「よく当てはまる」から「全く当てはまらない」まで5段階評価してもらい、これらを点数化して集計した。スポーツ経験者に対しては、競技種目、活動月数、1日あたりの活動時間などを聞いた。

■非認知スキル(能力)6項目                        
・自制心     あまり望ましくない目標や行為を避け、大きな目標に向かう気持ち
・忍耐力     長期的な目標を達成するための忍耐、根気、情熱        
・レジリエンス  ストレスが多い出来事で傷ついても、立ち直る精神的回復力   
・自己効力感   必要な行動をうまく取れると自己の可能性を認識する感覚    
・動機づけ    行動を始め、目標に向かって維持・調整する過程・機能     
・メタ認知方略  学習に役立つ戦略、計画などに意識を集中させる取り組み  


集団スポーツの方がスキル高い傾向

 調査の結果、スポーツ経験のある子どもは、未経験者と比べると、一部を除いて大半の項目で点数が高く、非認知スキルが上回っていることが確認された。

 競技の形態では、野球やサッカーなどの集団スポーツの方が、陸上や水泳といった個人競技よりもスキルが高い傾向が浮かび上がった。集団競技には、チーム全員で目標に向かって努力したり、仲間と助け合ったりする「協業学習」の効果があるとみられる。

 自制心や忍耐力に関しては、競技種目による違いは見られなかった。自分たちが選んだスポーツに「どのように取り組んでいくか」という主体性が重要といえる。

 また、スポーツに取り組む期間が長いほど、「自己効力感」や「動機づけ」などのスキルが高いことがうかがえた。

10~12歳は能力育む好機?

 スポーツ経験者を、小学校中学年(3・4年)、高学年(5・6年)、中学1年、2年、3年に分け、非認知スキルの高低を比較すると、小学校中学年から高学年にかけて上昇することがわかった。10~12歳の時期は、非認知スキルを伸ばす適齢期といえる。

 反対に、中学1年は一時的にスキルが低下する傾向が見られた。小学校の最上級生から一転して中学校の最下級生になり、多感さを増す時期であることから、子どもへの目配りやサポートが必要になりそうだ。

 今回の研究調査により、スポーツ活動は非認知スキルを養う有効な方法であることが顕著となった。夏原さんは「今後も様々な調査、評価を重ねてエビデンス(科学的根拠)を蓄積し、どんな教育・指導法が非認知スキルの向上に効果的なのか詰めていきたい」と話している。

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