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進行した肺がん治療は運が決める

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 年間13万人に見つかり、7万人余りが亡くなる肺がんは、日本で最も死亡者数が多い。中でも、最も進行した4期になると、余命は「半年か1年」と言われていた。その肺がんの状況が、変化し始めている。過去15年の間に新たなタイプの薬が登場し、従来よりずっと長く生きられる患者や、少数とはいえ、治癒と考えられるケースも出ているという。国立がん研究センター東病院呼吸器外科長の坪井正博さんに最近の肺がん事情を聞いた。

手術ができるか

 肺がんが見つかった時、病巣を完全に取り除くことができるかどうか、つまり、手術をできるかどうかが、ひとつの分かれ目だ。がんが小さくて、胸の外部のリンパ節や他臓器への転移がないなどの条件がある。肺を切除すれば肺活量が低下するので、手術をするには患者の体力や呼吸機能、意欲も重要という。肺がんが見つかって手術が可能な患者は3~4割とされている。

 病気の進行度は4期に分けられ、基本的には1期は手術、リンパ節への転移が限られた2期は手術と手術後の薬物療法となる。だが、より広がった3期に進んでいた場合は、主に放射線治療と薬物治療を組み合わせて、肺がんの消失を狙う。胸に水がたまったり、反対側の肺も含め他臓器に転移したりする4期は薬物治療になる。

 肺がんは、85%を占める「非小細胞がん」と進行が早い「小細胞がん」に分けられ、小細胞がんの治療は手術も行うが、薬物治療が中心になる。

遺伝子を調べて治療法を検討する

 肺がんは早期で見つかれば治るようになっているが、進行していると依然として手ごわい。しかし、2000年代から従来の抗がん剤に加えて、がんの増殖に関係する分子をターゲットにした分子標的薬が登場。2015年には、高額な値段が話題になった免疫療法薬オプジーボに保険が適用された。これらの薬の効果で、4期や再発がんでも長く生存できるケースが出ている。ただし、それを使えるか使えないかは、がんのタイプや遺伝子で決まっている。患者からすれば、運としか言いようがない面がある。

 肺がんの多くを占める非小細胞がんは、組織型から最も多い「腺がん」、「扁平(へんぺい)上皮がん」「大細胞がん」に分けられる。分子標的薬の効果が見込めるのは、ほぼ腺がんだけ。そのうち半数の肺がんを進行させるEGFR遺伝子の変異を持つ患者に使える薬が4種類承認されている。

 「薬には耐性が出てくるので、一定期間で効かなくなります。そうしたら、別の薬に切り替えます。1回目と同じような効果を期待できる薬があるのは、半数ぐらいでしょう。それでも、薬が合えば、『余命数か月』の病状だったとしても、5年、6年と生きられる人が出てきています」と坪井さんは言う。

 肺がんの分子標的薬は、他の遺伝子を対象に保険適用された薬や、商品化に向け臨床試験が進行している薬もあり、薬物治療は遺伝子を調べてから行う時代になっている。

薬が合うと進行がんから治癒する人も

 免疫の働きのブレーキを外して、がんを攻撃させる免疫療法薬「オプジーボ」は、遺伝子変異の有無は問題にならず、組織型とは無関係に肺がんの85%が治療の対象になる。ただ、効果が出るのは2~3割とされ、最初の抗がん剤治療が効かなくなった後に使う。

進行した肺がん治療は運が決める

 昨年には「キイトルーダ」という同種の別の薬が承認されたが、こちらはがん細胞を調べてPD-L1というタンパク質が多いタイプなら最初から使えて、4~5割への効果が報告されているという。いずれも少数とはいえ、治癒と考えられる患者が出ている点が期待を集めている。今年も「テセントリク」という薬が承認され、今後も新しい薬は出てくる。

 進行、再発した肺がんの治療は依然として厳しいが、自分に合う薬に出会う確率は高まってきている。

         ◇

坪井正博(つぼい・まさひろ) 国立がん研究センター東病院呼吸器外科長

1987年東京医科大卒、国立がん研究センター中央病院、東京医科大学病院、神奈川県立がんセンターを経て2012年から現職。

(医療ネットワーク事務局 渡辺勝敏)

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