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コラム

第2部[転勤](1)異動で転居 両立に影響

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 夫だけでなく、転勤のある働き方をする妻も増えている。共働き世帯では、どちらかの異動で配偶者が離職したり、単身赴任で残された側に仕事と子育ての負担が重くのしかかったりする状況が生まれている。連載の第2部では、仕事と家庭を両立する上で、時として大きな壁となる転勤について考えてみたい。

8割 会社主導で決定

 転勤はどのくらいの企業で、何のために行われているのか。

 従業員300人以上の企業を対象にした労働政策研究・研修機構の調査(2016年)では、正社員の転勤について「ほとんどに可能性がある」(34%)と「範囲は限られる」(28%)を合わせて、6割以上の企業で行われていた。転勤の決定は8割が「会社主導」で、「社員の意見・希望を踏まえる」は2割だった。

 目的(複数回答)は「社員の人材育成」(66%)が最多で、社員の適材適所や組織の活性化、欠員補充などもあった。

第2部[転勤](1)異動で転居 両立に影響

■欧米 本人の同意前提

 一方、欧米では転勤そのものがあまり見られない。人事支援会社「プロフューチャー」(東京)のHR総研主席研究員・松岡仁さんは「雇用慣行の違いによるところが大きい」とする。

 日本ではおおむね、終身雇用を前提に採用され、転勤を命じることがある旨の定めが就業規則にある。

 一方、米国や英仏では、採用段階から勤務地や仕事内容を書面で明確にするのが一般的だ。新規事業を展開する際は、現地採用したり社内公募をしたりして人材を確保する。松岡さんは「本人の同意なしには転勤できない仕組みだが、事業拠点の閉鎖が即解雇につながりやすい面もある」と指摘する。

■「したくない」 妻は71%

 転勤が、夫婦が共に働くことを阻む要因の一つになっている。

 総務省の就業構造基本調査(2012年)によると、自身の転勤のために転居した人数は、11年10月からの1年間では59万5500人(男性49万9100人、女性9万6400人)。20~30代が6割を占めた。一方、家族の転勤などを理由に離職したのは7万4900人。うち8割が女性で、子育て期の「35~39歳」が最も多かった。

 30~40代の従業員1525人が回答した中央大の多様性推進・研究プロジェクトの調査(15年)では、転勤によって「幅広い人脈の構築」や「変化への適応力」を得たと答えた人が6割を超えた。一方、私生活への支障(複数回答)としては「家計への負担」(24%)、「家族との関係」(18%)が多く、「配偶者の仕事」を挙げた人も17%いた。

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 今後の転勤について「できればしたくない」「絶対にしたくない」と答えたのは男性で計43%、女性計58%。共働きで、配偶者にも転勤の可能性がある人に限ると、男性が46%とほぼ変わらないのに対し、女性は71%と13ポイント高くなった。

 国は、企業が転勤を命じる際、労働者の育児や介護の状況に配慮するよう育児・介護休業法で規定する。また、働き方改革の一環として「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」を17年に公表。企業は転勤の現状や効果を検証した上で、労働者の事情を把握する仕組みを作ることや、転勤対象者には時間的余裕を持って告知することなどが運用のポイントになるとした。

企業にも負担 意義見直しを [神戸大教授(経営組織論) 平野光俊さん]

 

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 転勤を含む人事異動で人員調整や人材育成などを図りたい企業にとって、どこへでも転勤できる社員は便利な存在だ。しかし、近年は育児や介護、高齢などで働き方に制約がある人が増え、個々の事情に配慮しながら働き続けてもらえる環境を整える必要性が出てきた。

 そもそも転勤は、転居を求められる社員側だけでなく、引っ越し費用や手当などを払う企業側にとっても負担が大きい。一部の社員に偏ると不公平にもなる。そうした点も踏まえ、意義を考え直す時期に来ている。

 「地域限定正社員」という新しい雇用区分を作る動きもあるが、多くの場合、昇進に“天井”が設けられている。共働き夫婦に関して言えば、転勤が難しいのは一時期だけに限られることが多い。転勤しない時期に成長の機会が多少減るかもしれないが、それだけで昇進の可能性を閉じれば、働く意欲の低下につながってしまう。

 企業の業績も働き手の幸せも犠牲にしない道を、社会全体で探っていかなければいけない。

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 〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「共に働く」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。ツイッターは https://twitter.com/o_yomi_life_edu

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結婚、出産後も働き続ける女性が増える一方、育児との両立の難しさやキャリアアップを描きにくい現状はあまり変わりません。女性が真に活躍するために何が求められているのか。現代の「共働き事情」を描きます。

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