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認知症と就労(下)働ける環境へ 配慮と工夫

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認知症と就労(下)働ける環境へ 配慮と工夫

介護施設の玄関を掃除するアルバイトの男性。職場の支援を得ながら、できることをこなす(東京都内で)

 若年性認知症の人が働き続けるには、職場の理解と支援が欠かせない。認知症の人を受け入れ、能力に応じて働ける環境を整えている職場を訪ねた。

 東京都内の介護施設。アルバイトの男性(57)は、玄関の掃除や庭の草むしりなどをてきぱきとこなす。書類の整理や封入などの簡単な事務も任されている。1日6時間、週4日働き、月10万円弱の収入を得る。

 男性はアルツハイマー型認知症で、2016年3月に教員の仕事を辞め、このアルバイトを始めた。

 施設では、介護を受ける認知症の人はいるが、スタッフとして受け入れるのは初めて。だが、男性の症状は進行しておらず、コミュニケーションもとれる。施設の責任者は「男性は、できる仕事をやろうと気持ちを切り替えた。その意欲を支えたかった」と話す。

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 施設ではまず、職員が掃除の手本を見せた。口頭で説明しただけでは理解が難しいためだ。写真やイラスト、日課表などを用意し、仕事の内容や予定がひと目で分かるようにした。

 仕事を紹介したのは、東京都若年性認知症支援コーディネーターの 来島きたじま みのりさん(51)だ。男性は教員を辞める前から次の仕事を探し始め、妻(56)とハローワークなどを訪ねたが、見つからない。職探しの過程で知り合った来島さんが、勤務する社会福祉法人に依頼して、清掃の仕事を提供してもらった。男性は「皆さんの役に立てるなら色々な仕事をしたい」と意欲をみせる。妻も「仕事が夫の励みになっている」と喜ぶ。

 来島さんは、男性のほか4人に、別の施設の清掃などの仕事を紹介した。「各職場の協力を得て、認知症の人が働くための配慮や工夫を研究したい」と語る。

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木工房で働く元看護師の女性(左)。社長の稲葉さん(右)と会話しながら作業に励む(静岡県富士宮市で)

 静岡県富士宮市の木工品製造販売会社「木工房 いつでもゆめを」は、社長の稲葉修さん(66)が「認知症の人に働く場を提供しよう」と、13年12月に設立した。

 従業員9人のうち、元営業マンの男性(69)や元看護師の女性(55)ら5人が認知症。週2日、各3時間、木材を磨き、塗装する。時給は1000円だ。

 家具職人や土木建築の 棟梁とうりょう の経歴がある男性(66)は、くぎを打つ場所が認識できないが、稲葉さんが黒いペンで木材に丸印をつけると、そこに正確に打てる。「できましたね」と声をかけると、「当たり前さ」と笑顔を見せたという。

 稲葉さんは03年から、工房の隣で認知症高齢者のグループホームを運営し、多くの認知症の人に接してきた経験を工房に生かす。無理のない作業工程にするため、1時間ごとに30~60分の休憩を入れる。木材を切ったり、組み立てたりする複雑な作業は、認知症ではない従業員が行う。

 稲葉さんは「こうした工夫や支援があれば働ける。社会とつながる喜びをみんなで味わいたい」と話す。

症状進行したら業務見直し

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 認知症介護研究・研修 大府おおぶ センター(愛知県大府市)が2017年に行った調査で、若年性認知症やその疑いのある人などが就労していた企業など63か所に対応を尋ねたところ、最多は「他業務に変更」(59%)だった。次いで「労働時間の短縮等」「管理職からの変更」(各16%)、「支援者を配置」(13%)など一定の配慮をしていた。

 障害者職業総合センター(千葉市)の元特別研究員、田谷勝夫さんは「早めに発症を把握し、軽度のうちに就労環境を整えれば、より長く働ける。記憶障害などの症状は徐々に進行するため、業務の内容や支援方法を柔軟に見直すことが大切だ」と指摘する。

 北海道若年認知症の人と家族の会の平野憲子事務局長は「従業員が認知症の診断を受けたら、職場でどう支えていったらよいか、まず主治医に相談し、家族も交えて話し合ってほしい」と呼びかけている。

 (野口博文)

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