宋美玄のママライフ実況中継
医療・健康・介護のコラム
被害者も悪い? 性暴力、セクハラへの反応に日本の無理解
ゴールデンウィークに子供たちと目いっぱい遊んだ余波で、今週は仕事がいつもよりきつく感じます。それとともに、梅雨入りしたのかと錯覚するほどの雨続きで肌寒い日々。4月に小学校に入学した娘は、傘をさしてもランドセルがびしょぬれで、まだ一人で登校させるには不安です。毎日宿題も出るので、ちゃんとこなせているかをチェックしないといけないし、仕事と育児の両立は、まだまだ楽になりそうにありません。
世界学会がうたう「性の健康」「性の権利」の重要性
性の問題といえば、なんとなくタブー感を持っている方も多いと思いますが、性の健康世界学会のモントリオール宣言には、性の健康、性の権利について、以下のようなことが書かれています。
・人間の性は生殖以外の目的や意味を多く持っており、中でも性の喜びは人間的なものであり幸福の要素である。
・性の健康のためには、ジェンダーの平等と相互の尊重が必要である。社会的差別や性的虐待、性暴力が排除されなければ性の健康は達成されない。
・セクシュアリティー教育、性教育が必要である。
こう書くと、どれも当然の内容です。また、この宣言は、「産む・産まないについて他人に強制されることがあってはならない」ということも前提としています。
しかし、昨今、世を騒がせている著名人の性暴力やセクハラの報道に対する世論を見ていると、まだまだ「被害に遭う方にも非がある」と考える人も多いようですし、エラい人が「セクハラ罪はない」と言ったりと、「平等」や「相互の尊重」が浸透しているとは言えない状態です。
また、子供たちが性教育を受ける機会も十分に与えられているとは言えません。それが日本の現状です。
産む・産まないの自由についても他人からのプレッシャーを感じる人がまだまだ多いのではないでしょうか。
医療従事者も一般の人も学んでほしい
そんな時と重なって、何年も温められていた専門書が刊行されました。「セックス・セラピー入門 性機能不全のカウンセリングから治療まで」(日本性科学会編集、金原出版)です。性に関する専門家向けの教科書ですが、豪華な執筆陣によりジェンダー、男女の性のしくみ、カウンセリングや治療の方法と注意点など、総論から各論まで網羅されています。私は「喜びを高めるためのセックス・セラピー」という章の女性編を担当させていただきました。
私が医学生の頃、大学の授業では性反応や性機能のことは習いませんでした。卒業してすぐ産婦人科医の道へ進みましたが、その後も受動的に習う機会はなく、専門医試験の教科書にもほとんど載っていません。私が初めに性反応や性機能について勉強したのは、今回刊行された本の前身となる「セックス・カウンセリング入門」(金原出版)という本でした。
医療現場では、性に関することで困っている人に多く出会います。性を正面からとらえ、勉強する医療従事者が増えるといいなと思います。
そして、正しい知識を一般の人にもと思い、私が書いたのが「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」シリーズ(ブックマン社)です。読者のみなさんには、網羅的な専門書でも、一般の方向けの本でもいいので、ぜひ性に関する知識と理解を深めていただければと思います。(宋美玄 産婦人科医)
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