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アルツハイマー「前段階」の6割、3年以内に認知症発症…原因物質の蓄積で

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 脳内にアルツハイマー病の原因物質が蓄積していて、認知症の前段階といわれる軽度認知障害(MCI)と判定された日本人の6割が、3年以内に認知症に進行したとの研究結果を、東大など38研究機関のチームが9日、米科学誌に発表した。

 日本人を対象に、MCIからアルツハイマー型の認知症への進行過程を詳しく分析したのは初めて。

 アルツハイマー病では、認知症発症の20年ほど前から、異常なたんぱく質アミロイド βベータ (Aβ)が脳内に徐々に蓄積すると考えられている。

 この研究には60~80歳代の男女が参加。Aβの蓄積を調べる「アミロイドPET」や「脳脊髄液検査」という特殊な検査を受けた278人のうち、167人にAβが蓄積していた。そのうち、専門医による問診などでMCIと判定された人は75人。認知症は73人、健常は19人だった。3年間の追跡期間中に、MCIだった人の64%が認知症に進んだ。

 米国の同様の研究でもAβの蓄積があるMCIの人の60%が、3年以内に認知症に進行しており、近い値だった。定期的に記憶力などをみる認知機能検査を行って測定した悪化のスピードも、日米でほぼ一致していた。

 研究代表者の岩坪 たけし ・東大教授は「アルツハイマー病の認知症発症までの進行過程は、日本人も米国人と同様であると確認できた。治療薬の開発研究は、世界と共同で加速すべきだ」と話す。

          ◇

軽度認知障害(MCI) 】記憶力などの認知機能は低下しているが、日常生活には大きな支障が出ていない、認知症と正常の中間の状態。生活上の支障が大きくなると認知症と診断される。国の推計(2012年)では、認知症の高齢者462万人に対し、MCIは400万人。MCIはMild Cognitive Impairmentの略。

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