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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

目が開けられないのに…時代遅れな障害認定基準の壁

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障害申請を却下…あの認定基準が理由

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 彼女が最も困っていることは、ものが見えないことです。私たちが提唱している「眼球使用困難症候群」に相当します。

 誰が見ても、失明している方とほぼ同じぐらい不自由であることは明らかです。体にも激しい痛みがあるので、通常の視覚障害者以上に (つら) い日常が続いているのです。

 日本の法律では、いくら激痛が持続しても、それだけで身体障害者と認定する条項はありません。しかし、このケースは事実上の「視覚障害者」に違いないと言えます。私が「視覚障害認定に値する」との診断書・意見書を書いて、彼女が地元の区役所に申請しました。

 でも結局、申請は通りませんでした。東京都が申請を却下した理由を示した文書には、「東京都社会福祉審議会に諮問したところ、冒頭の文書(都の視覚障害認定基準の留意事項)が存在するために非該当」とありました。

 この審議会は、都が設置する第三者委員会です。委員は28人で、医師や、都議会議員や、公募による委員が名前を連ねています。基準に照らして「非該当」となったり、意見書に書かれた等級より低く判定されたりといった、申請者に不利益が生じる可能性があるケースはすべて、ここに評価を答申するそうです。 

目配りに欠ける福祉政策…第三者委員会の存在意義とは

 障害者の認定は、各都道府県の業務です。各都道府県の基準は、身体障害者福祉法や国による関連通知を踏まえていますが、ある程度の裁量が許されています。私がウェブサイトで見た範囲では、東京都の視覚障害認定基準の留意事項による規定と同様の内容は、ほかでは確認できませんでした。

 都の委員の皆さんが、申請者の状態をイメージさえできれば、「その生活実態は重い視覚障害者だと同等だ」と実感できるはずではないでしょうか。それでも、誰一人、この運用上の規定の文章に疑問をさしはさまなかったのでしょうか。「それぞれの申請について、今までの運用上の規定に当てはめて判断しているだけだとしたら、委員会の存在意義はいったい何なのだろうか」と思ってしまいます。

 ちなみに、同じような開瞼困難で不自由があり、視覚障害者に認定された男性がいます。私が担当した患者さんです。彼によると、手帳を申請した県からはいったん却下されました。しかし不服の申し立てをしたところ、その県では前例がないとのことで、厚労省に照会した上で交付が決定されたそうです。

 今回の女性は、体の慢性的な痛みが加わっている分、さらに重い障害だと思われます。そのような実態が考慮されない、目配りに欠ける福祉政策が東京都で行われているのではないか、と考えると、ため息が出てしまいました。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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