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訴訟促されたのに労災記録不開示…石綿関連疾患で死亡2人の遺族、国を提訴へ

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 国による石綿(アスベスト)被害の救済手続きを受けられる可能性があるため国に提訴を促されたのに、裁判を起こせるかどうかの確認に必要な労災記録の開示を拒まれたとして、石綿関連疾患で死亡した元工場労働者2人の遺族が、国に不開示処分の取り消しを求め、近く大阪地裁に提訴する。

訴訟促されたのに労災記録不開示…石綿関連疾患で死亡2人の遺族、国を提訴へ

 訴えによると、遺族は、兵庫県尼崎市の石綿関連工場で働き、2000、04年に中皮腫で死亡した男性2人の息子ら。2人は死後に労災認定され、いずれも妻が遺族補償を受け取っていた。妻はすでに亡くなっており、息子らは今年3月、国家賠償訴訟の提訴を促す通知を国から受け取った。

 通知は、救済の可能性がある全国の約2300人に手続きのことを知らせるため、国が昨秋から始めた。息子らは2人が救済対象かどうかを調べるため、労災認定の記録を保存する兵庫労働局に、2人の業務内容や労働期間の調査報告書などを開示請求。しかし、同労働局は本人以外への開示を認めていない行政機関個人情報保護法の規定に基づき、開示を拒否した。

 息子らは「石綿被害は潜伏期間が長く、遺族が元労働者の作業実態を調べるには限界がある。労災記録はほぼ唯一の手がかりで不開示は違法」と主張している。

 大阪アスベスト弁護団の谷真介弁護士は「被害救済を進めるため、手持ちの資料を開示するのは国の責務。訴訟を促しながら開示しないのは不合理だ」と憤る。

 兵庫労働局は「個別の事案には答えられないが、個人情報を開示請求できるのは本人や労災補償を受けている遺族に限られており、規定に基づき決定している」としている。

 国から通知を受け取りながら、労災記録を不開示とされた遺族は他にも複数存在する。遺族らを支援している各地の弁護団などは昨年11月、厚生労働省に対し、各地の労働局に開示させるよう指導を求めたが、同省は「検討する」としたままで、明確な回答はないという。

 個人情報開示に詳しい曽我部真裕・京都大教授(憲法)は「遺族には通知と戸籍のコピーの提出を条件に開示するなど、柔軟な対応を取るべきだ」と指摘する。

          ◇

石綿被害の救済手続き 】 1958~71年に石綿関連工場で働き、関連疾患を発症した元労働者や遺族が国を相手に裁判を起こせば、和解を経て国が550万~1300万円の賠償金を支払う。大阪・泉南地域の石綿被害に関し、最高裁が2014年、被害の深刻さが明らかになっていたのに、工場に排気装置の設置を義務づけていなかったとして、この期間の国の責任を認めたことを受け、始まった。

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