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韓国の幼児教育・保育無償化…家庭で育児でも手当支給

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所得に関係なく補助

韓国の幼児教育・保育無償化…家庭で育児でも手当支給

ソウル市内の幼稚園から帰宅する親子。韓国では2013年から、幼稚園や保育園が無償化された(18年1月撮影)

 来年度から日本で始まる予定の幼児教育・保育の無償化。隣の韓国では2013年に、0~5歳児の一律無償化を導入している。無償化で何が変わったのか、課題や日本にとってのヒントを現地で探った。

 韓国・ソウルの住宅街にある公立シンイル保育園。午後3時過ぎ、おやつを食べ終えた子どもたちが、保護者の迎えを待つ間に遊び始めた。壁は色紙で作った花や動物で飾られるなど、日本の保育園と変わらない光景だ。

 違うのは、韓国では共働きでなくても保育園を利用できること。保護者の所得に関係なく、保育料を国と自治体が補助することだ。

 韓国では12年、すべての0~2歳児と5歳児を対象に、保育園や幼稚園の保育料を補助する制度が始まった。13年からは、補助対象が3、4歳児にも拡大した。家庭で子育てする場合も手当が支給される。「一人親や生活が苦しい家庭もある。どんな子どもも、平等に保育や教育を受けられる政策は重要だと思う」と、イ・ソンレ副園長は話す。

 保育料の補助額は、年齢に応じて月22万~44万1000ウォン(約2万2000円~4万4100円)。家庭で育てる場合は、最大で月20万ウォン(約2万円)支給される。

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 一律の無償化で保育園の需要は増加傾向にある。

 次男(3)を保育園に預けるソウル近郊の主婦(37)は、「1人での子育ては大変。子どもを預けている間、将来働くための勉強もできる」と歓迎する。

 しかし、利用者層の拡大で、共働き家庭が利用しにくくなった面もある。韓国保健福祉部が15年に保育園約4000か所を調査したところ、定員の空きを待つ待機児童が「いる」と答えた園は65%。09年の36%と比べて2倍近くになった。共働き家庭が優先的に入れる国公立保育園で、200人以上が待機する施設は全体の4割に達した。

 ソウル市内の公立保育園に次女(5)を預ける高校講師の女性(39)は「生まれてすぐに申し込んで、入園できたのが1歳過ぎてから。申し込みが遅れたらもっと待たされただろう」と話す。

 政府は、専業主婦世帯の保育利用を1日6時間に制限し、民間保育園を増やして対応してきた。しかし、複数の民間園で、保育士が「しつけ」と称して子どもを殴るなどの問題が表面化。ソウル大のイ・ボンジュ教授(社会福祉)は「特に民間園では保育の質が低下している。保育士の待遇を上げ、良い人材を集める必要がある」と話す。

19年度にも一部実施 日本

 日本では昨年12月、幼児教育・保育の無償化が閣議決定された。

 幼稚園や保育所、認定こども園に通うすべての3~5歳児の保育料が世帯所得に関係なく無料になる。0~2歳児は、所得の低い層に限り、無償化される。

 現在、認可外保育施設のどこまでを無償化の対象とするかなどを決める議論が続いている。夏までに詳細が固まり、19年度にも一部が始まる見通しだ。

日本より少子化深刻

 韓国の幼児教育・保育無償化の背景には、日本より深刻な少子化問題がある。1人の女性が生涯に産む子どもの平均数の推計値(合計特殊出生率)は、1980年の2.70から00年には1.47と20年間でほぼ半減。韓国政府は1990年代以降、子育て世帯の負担を減らし、女性の就業率を上げようと、低所得層への保育料補助を始め、徐々に補助対象を広げてきた。

 それでも、富裕層も含めた一律の無償化には反対論もあった。韓国子育て政策研究所のペク・ソンヒ所長は「子どもの教育に対する国の責任を強調するため、無償化が必要だった」と説明する。

 ただ、韓国統計庁によると、17年の合計特殊出生率は1.05、出生数は約36万人と、いずれも暫定値だが過去最低となった。ニッセイ基礎研究所(東京)の 金明中キムミョンジュン 准主任研究員は、「限られた財源の大半を無償化政策に投入することが適切なのか。結婚奨励策や働きやすい職場作りなどにも予算を投入していくべきだ」と話す。

 (樋口郁子)

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