心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
視力に問題はないのに読むことがつらい…「アーレン症候群」
眼球には問題がなく、視力や視野にも異常がないのに、ものを読むことが困難な人がいます。
先日、そんな悩みを持つ20歳代の女性が私の外来を訪れました。
自分だけが「眩しい」…クリアファイル越しに読む日々
彼女は小学生のころから、他の人が 眩 しさを感じていないのに、自分だけが感じていたといいます。そのために、明るいところで教科書などを読むことが困難で、長く見続けることはできなかったそうです。
なるべく文字を見ないようにしていたのですが、ある日、クリアファイルの中に入っている文書を偶然見たら、普段よりもずっと見やすいことに気づきました。ただ、それを周囲の大人に言っても、笑われるだけだったと言います。
成長するにつれて、ものを読む機会が増えましたが、読む速度は遅く、行を間違えることもありました。照明を落としたり、クリアファイル越しに文書を見たり、サングラスをかけてみたり、行間違いを避けるために、読みたい一行だけが見えるスリット状の器具を作って利用したりと、自分で工夫しながら過ごしました。
眼球使用困難症?…視覚ストレス症候群、あるいはアーレン症候群
そして、この不思議な現象を少しでも理解したいと、目や眼鏡について学ぶ眼鏡専門学校に進んだそうです。
そのおかげで、自分なりにましな眼鏡を探すことができたといいます。しかし、医学的な観点からの理解は進みませんでした。
「私も、眼球使用困難症だと思うのですが」というのが、彼女の第一声でした。そうです、このコラムコーナーで、その言葉を知って来院したのです。
「確かにそういうこともいえますね」と答えた私は、「あなたの症状は『視覚ストレス症候群』あるいは『アーレン症候群』に相当します」と説明しました。
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