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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

視力に問題はないのに読むことがつらい…「アーレン症候群」

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 眼球には問題がなく、視力や視野にも異常がないのに、ものを読むことが困難な人がいます。

 先日、そんな悩みを持つ20歳代の女性が私の外来を訪れました。

自分だけが「眩しい」…クリアファイル越しに読む日々

視力に問題はないのに読むことがつらい…「アーレン症候群」

 彼女は小学生のころから、他の人が (まぶ) しさを感じていないのに、自分だけが感じていたといいます。そのために、明るいところで教科書などを読むことが困難で、長く見続けることはできなかったそうです。

 なるべく文字を見ないようにしていたのですが、ある日、クリアファイルの中に入っている文書を偶然見たら、普段よりもずっと見やすいことに気づきました。ただ、それを周囲の大人に言っても、笑われるだけだったと言います。

 成長するにつれて、ものを読む機会が増えましたが、読む速度は遅く、行を間違えることもありました。照明を落としたり、クリアファイル越しに文書を見たり、サングラスをかけてみたり、行間違いを避けるために、読みたい一行だけが見えるスリット状の器具を作って利用したりと、自分で工夫しながら過ごしました。

眼球使用困難症?…視覚ストレス症候群、あるいはアーレン症候群

 そして、この不思議な現象を少しでも理解したいと、目や眼鏡について学ぶ眼鏡専門学校に進んだそうです。

 そのおかげで、自分なりにましな眼鏡を探すことができたといいます。しかし、医学的な観点からの理解は進みませんでした。

 「私も、眼球使用困難症だと思うのですが」というのが、彼女の第一声でした。そうです、このコラムコーナーで、その言葉を知って来院したのです。

 「確かにそういうこともいえますね」と答えた私は、「あなたの症状は『視覚ストレス症候群』あるいは『アーレン症候群』に相当します」と説明しました。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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