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「アトピー性皮膚炎」の新薬発売…炎症反応、抗体が防ぐ

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「アトピー性皮膚炎」の新薬発売…炎症反応、抗体が防ぐ

 かゆみのある湿疹が繰り返しできるアレルギー疾患「アトピー性皮膚炎」の新しい治療薬が4月23日に発売された。症状の重い患者に効果が期待される。治験(臨床試験)でこの薬を使った長野県佐久市の自営業、菊田かをるさん(45)は、かゆみが止まるなど症状が大きく改善した。(西原和紀)

3つの対処法が基本

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 厚生労働省の調査によると、アトピー性皮膚炎の患者数は2014年で45万6000人に上る。子どもだけでなく、大人にも多い。

 治療は〈1〉薬物療法〈2〉スキンケア〈3〉悪化させる要因の除去――が基本。炎症を抑えるステロイドやタクロリムスの塗り薬などを使う。入浴やシャワーで汗や汚れを洗い流し、すぐに保湿剤を塗る。ダニやほこり、カビなどのアレルギー物質を取り除くことも重要だ。

「生活の質に影響」86%、「精神面に影響」79%

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 ただ、完治は難しく、かゆみのつらさなどに苦しむ人は多い。

 九州大学准教授の中原剛士さんらが17年8月に行った意識調査では、アトピーによって、生活の質に影響がある人は全体の86%、精神面に影響がある人は79%を占めた。

 発売された仏製薬大手サノフィの「デュピクセント」(一般名・デュピルマブ)は、アトピーでは初のバイオ医薬品。有効成分には、化学合成したものではなく、抗体というたんぱく質を使っている。15歳以上で症状が重く、ステロイドなどで治療効果が不十分な人が主な対象だ。

 アトピーでは、皮膚から体内に侵入したアレルギー物質に過剰に反応して、「Th2細胞」という免疫細胞が増える。新薬は、Th2細胞が大量に放出するたんぱく質・インターロイキン4(IL―4)やインターロイキン13(IL―13)が皮膚細胞などの受容体と結合し、炎症反応を引き起こすことに注目。この結合を、新薬が妨げることで炎症を抑える。

 菊田さんは子どもの頃から、アトピーの症状に苦しめられてきた。生後半年ほどで発症し、かゆみで血が出るほどかきむしり、肌はどんどん赤黒くなっていった。大人になってからは症状が悪化するたびに入院を繰り返した。しかし、15年から約3年間、薬を使い続け、かゆみを抑えられたという。菊田さんは「副作用もなく、周りの人からは肌が白くきれいになったと驚かれた」と効果を実感する。

ぜんそくを合併する患者は要注意

 新薬は副作用として、アレルギー性結膜炎や頭痛などの症状が出る可能性はあるが、症状の重いものは起きにくいという。注意が必要なのは、ぜんそくを合併する患者だ。新薬によってぜんそくも改善するが、それによって気管支拡張薬の使用などを中断すると急激にぜんそくの症状が悪化する恐れがある。

 日本医科大学病院皮膚科部長の佐伯秀久さんは「ぜんそくの治療はきちんと続ける必要がある」と話す。

新薬、2週間ごとに注射

 新薬は、初回600ミリ・グラム、2回目以降300ミリ・グラムを2週間ごとに注射する。薬価は2回目以降の量が1回8万1640円。保険で窓口の支払金額は1~3割で済むが、継続すると経済的な負担は重い。

 NTT東日本関東病院皮膚科部長の五十嵐敦之さんは「治療の選択肢が少ない中、患者に朗報だ。症状がよくなったら、新薬は中断できる可能性もある」と話している。

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