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成年後見制度「本人の意思尊重を」…大阪家裁が指針

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 判断能力が不十分な人を支援する成年後見制度を巡り、大阪家裁が、後見人に利用者本人の意思を尊重するよう求めるガイドライン(指針)をまとめた。認知症の高齢者が増える一方、利用者数は伸び悩んでおり、本人の意向を確認せず、勝手に判断する後見人への不満が一因とされるためだ。家裁は後見人に「本人中心主義」を徹底させ、利用者増につなげたい考えだ。

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成年後見制度「本人の意思尊重を」…大阪家裁が指針

 「意思決定支援を踏まえた成年後見人事務のガイドライン」で、家裁が大阪弁護士会や大阪司法書士会などの協力も得て、今年3月に完成させた。〈1〉本人の希望や価値観を最大限考慮する〈2〉本人の意思決定を助けるあらゆる方法が尽くされないと、意思決定ができないとは見なさない――など基本的な考え方を示し、後見人が利用者の生活状況や希望内容を書き込むシートを用意した。

 後見人が直面しやすい事例も盛り込んでいる。

 <自宅が老朽化して危険だが、施設への入居を勧めても、住み慣れた自宅にこだわっている>

 こうした場合、転居を押しつけず、「建物の写真などを使って老朽化の状況をわかりやすく伝え、本人の判断に必要な情報を提供することが重要」と説く。さらに、後見人だけでなく、本人をよく知る福祉、医療関係者らを含め、チームで対応を検討するよう求めている。

 家裁は指針を弁護士会や司法書士会に配布。研修会を開いて周知するとともに、今後、具体事例を増やしていく方針だ。

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 指針作成の背景には、制度利用の伸び悩みがある。

 最高裁によると、後見(保佐、補助を含む)の申し立ては2013~17年、年3万5000件前後で推移。一方、利用が見込まれる認知症高齢者は国の推計で500万人超とされるが、17年末の利用者は約21万人にとどまる。

 原因の一つに挙げられるのが、本人の意思を反映させない後見人の存在だ。

 日本弁護士連合会(日弁連)は15年、後見人の経験がある弁護士や司法書士ら960人にアンケート調査を実施した。その結果、「本人の意思確認をしない」と回答した割合は15%、「しないこともある」が50%で、理由は「本人は合理的な判断ができない・しにくい」が75%で最も多かった。介護サービスの内容や保険契約のほか、居住先が勝手に決められたケースもあったという。

 家裁は「利用者がメリットを実感できる制度が求められている。将来的には、親族や一般市民の後見人らにも幅広く利用してもらえるようにしたい」としている。

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【成年後見制度】  家裁が選任した後見人が、認知症の高齢者や知的障害者に代わって不動産や預貯金などの財産管理、契約行為を行う。2000年に始まった。本人の判断能力が低い順に、「後見」「保佐」「補助」の3段階の支援があり、弁護士、社会福祉士ら専門職のほか、親族や一般市民も務める。

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