子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
発達障害(22)相談・判断力 社会参加に必要
発達障害では、精神科医で信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授の本田秀夫さんに聞きます。(聞き手・松本航介)
発達障害の子どもたちがうまく社会に参加していけるかどうかを測る目安として、私は二つの力を考えています。
一つは、自分にできると思ったことはきちんとやるけれど、できないと思ったことは無理しない。こういう判断をする力です。もう一つは、自分にはできないなと思った時に、ほかの誰かに相談する力です。
例えば、会社で上司から「君、この仕事をやってくれ」と頼まれた時、とてもできそうにないのに「できます」と安請け合いしてしまい、締め切り直前になって「やっぱりできませんでした」などと言うと、会社は大変です。
できそうにないのなら、「ほかの仕事で忙しいので、私には無理です」ときちんと言えることが大切です。そして、それならどうすればいいのかということを、同僚たちに相談しなければなりません。
何かを言われた時に、自分一人でできそうか、できそうにないかを判断する力と、自分一人ではできそうにないと思った時に他人に相談する力。社会に適応していくためには、この二つの力をセットで身につけることが重要です。こうした力を、一般の人は自力で身につけますが、発達障害の人はそれが難しい。小さい時から丁寧に教えていかないと身につきません。
教えるには、社会のルールや人間関係を、子どもが一目見てすぐにわかるような形で示し、大人から子どもに提案していくことが大切です。
発達障害の話は今回が最終回です。発達障害の人たちを理解し、支え育てていくために最小限必要なことを述べてきました。この連載をきっかけに、少しでも多くの人が発達障害に興味をもっていただければ、望外の喜びです。(発達障害のシリーズは今回で終わります)
【略歴】
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部付属病院子どものこころ診療部部長・診療教授。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。
【関連記事】
発達障害は程度問題と症状の柔軟性ですか?
寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受
人間と社会の関係は相対的ですね。 発達障害と名がつくと別のものに聞こえますが、上司の命令が断れない会社や特定個人が狙われる会社だと仕事が抱えきれ...
人間と社会の関係は相対的ですね。
発達障害と名がつくと別のものに聞こえますが、上司の命令が断れない会社や特定個人が狙われる会社だと仕事が抱えきれない現象が発生します。
進学校やスポーツ校の子供たちは少なからず履修内容や履修時間が偏って、似たような状態に陥りがちです。
どこまで矯正して、どこまで他人に依存していいのか、なかなかに難しい問題です。
そういう意味でも社会の在り方自体が問われているのかもしれませんね。
長期的な教育や慣れの問題も含めて。
つづきを読む
違反報告