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助産師主体の介助「院内助産」…専任担当チーム、産科医不足に対応

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助産師主体の介助「院内助産」…専任担当チーム、産科医不足に対応

生後3日の長女を抱く原田さん(手前)に「パパとママ、どっち似かな?」などと尋ねる助産師たち(大阪市の千船病院で)

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 病院や診療所で、助産師が主体になって出産を介助する「院内助産」が増えている。経過が正常な出産のみが対象で、妊娠中から産後まで切れ目なく寄り添って妊産婦の不安を和らげ、満足のいくお産につなげる。産科医不足に悩む地域の出産を支える仕組みとして、国も普及を後押しする。(藤本綾子)

 

妊産婦の満足度も高く…

 

 「顔見知りの助産師さんが付いていてくれ、心強かった」。大阪市内の千船病院で3月下旬、第2子となる長女を出産した原田由梨花さん(21)は話す。医師が立ち会わず、和室の 分娩ぶんべん 室で夫と助産師に励まされての出産だった。

 長男(2)の出産時も「和室のリラックスした雰囲気で産みたい」と院内助産を希望。分娩中に血圧が上昇し、医師が立ち会って分娩台で出産することになったが、「初産で心配なことも助産師さんが丁寧に説明してくれた」と振り返る。今回も院内助産を選択、「妊婦健診では上の子の育児の相談にも乗ってもらえ、ありがたかった」という。

 大規模な医療機関での出産では、その日の当番の助産師が立ち会うため、妊婦は初めて顔を合わすことも珍しくない。同病院が約10年前に始めた院内助産では、専任の助産師チームが健診から分娩、産後まで一貫して担当。昨年度は1618件の出産のうち2割を占めた。

 助産師の川又睦子さんは「経過が順調でも出産に不安を感じる人は多い。どんな出産をしたいかを一緒に考えることで、育児への前向きな気持ちを引き出すこともできる」と話す。産婦人科部長の岡田十三さんによると、責任の大きさが助産師たちの成長にもつながっているという。

 院内助産は産科医不足対策として、厚生労働省が2008年に発表した「医療確保ビジョン」に盛り込まれた。正常な出産を助産師が担うことで、産科医不足の要因の一つとされる過重労働の軽減につなげる狙い。国は助産師外来室の設置や研修のための財政支援もし、実施する医療機関の数は08年の31か所から14年は166か所にまで増えた。

 神戸大教授(母性看護学・助産学)の斎藤いずみさんは「院内助産の実施には、慎重に合併症や妊娠中のリスクなどを見極めることが重要だが、リスク管理が適切ならば、医師立ち会いの出産と安全性に差はなく、妊産婦の満足度も高い」と評価する。

 地域に欠かせない存在になっている例もある。兵庫県 養父やぶ 市の公立 八鹿ようか 病院は08年に導入。現在は受け入れを正常分娩に限定し、院内助産を基本に据える。産科医が1人だけの時期もあったが、妊婦を受け入れてきた。

 同市を含む但馬地域は約17万人が暮らすが、出産ができる医療機関は同病院を含めて2か所しかない。当初は医師が立ち会わないことへの不安の声もあったが、今は家族や友人の勧めで来る人や、「2人目もここで」という“リピーター”も多いという。

 ただ、地方では助産師の確保すら難しい地域もある。看護師資格も持つ助産師が産科以外の様々な業務を担い、院内助産を始める余裕がない病院も少なくない。斎藤さんは「助産師が出産に集中し、活躍できる環境を作る必要がある」と指摘する。

         ◇

【院内助産】  緊急時の対応が可能な医療機関で、助産師が主体となって妊婦健診や出産の介助を行う仕組み。陣痛促進剤の使用や会陰部の切開などの医療行為を必要としない、正常な経過の出産だけを扱う。妊娠・出産中に異常が現れた場合などは医師が対応する。

 

妊婦が望む「バースプラン」取り入れる医療機関も

 

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 出産に対する妊産婦の満足感を高めるため、「バースプラン」を取り入れる医療機関も多い。妊婦自身がどんな出産をしたいかを書き記して医師や助産師らに伝えるもので、院内助産を行う病院で採用する例もある。

 日用品メーカー「ユニ・チャーム」(東京)の2010年の調査では、出産経験者の半数が書き記し、うち8割が肯定的な評価をしていた。

 特に決まった形式があるわけではない。バースプランに詳しい毛利助産所(神戸市)の毛利多恵子さんは、「初めての出産の場合は、どう書いていいのか分からない人も多い。まず、医療機関や自治体が開く妊婦講座などに参加し、出産について勉強してほしい」と勧める。知識が深まれば、希望も明確になってくるという。

 一人で完成させようと思わず、助産師らと相談しながら具体化していくといい。毛利さんは「書いて終わりではなく、運動や食事に気をつけるなど、希望の出産を実現するための努力も忘れないで」と話す。ただ、「出産は思うようにはいかないこともある。母子の安全が最優先なので、かなわないことがあると理解しておいて」と念を押す。

 

選択肢の一つに…取材を終えて

 

 2年前に長男を出産した時には陣痛促進剤などの力を借りた。私は「それなりに頑張った」という満足感があるが、自然でない出産を「産んだというより産まされた」と感じる人もいるそうだ。出産へのニーズや感じ方は多様だ。

 院内助産の取材のため訪れた病院では、こうした異なるニーズや感じ方に助産師ならではのきめ細かな心配りで対応していた。選択肢の一つとして広まる可能性を秘めていると思う。

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