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僕、認知症です~丹野智文44歳のノート

医療・健康・介護のコラム

「認知症でも安心して暮らせるまちに」仙台市長に手紙

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仙台市の「市長への手紙」の用紙です。市役所や区役所、地下鉄の駅などに置かれています

区役所の窓口で対応に「?」

 2013年春に若年性認知症との診断を受けてすぐ、何か支援がないかと思って仙台市の区役所に行きました。しかし窓口で、「40歳未満の人は介護保険が使えないので、何もありません」と言われたことは、昨年8月22日公開のコラムでも述べました。

 その後、地元の「認知症の人と家族の会」のつどいに参加するようになり、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)と自立支援医療という制度があることを知りました。障害者手帳があれば、障害者雇用の枠組みで働けるので、会社が障害者雇用率を達成する助けになります。また、自立支援医療では、治療費の自己負担が軽減されます。

 仕事を続けることができたものの、営業から事務にかわったので、給料は前と同じではありません。アルツハイマーの治療のため、大学病院にも通い続けています。私にとっては、毎月の薬代を払うためにも、必要な支援です。

あと一言が助けになるのに…

 「家族の会」で、どの窓口に行って、どうやって申請すればよいかを丁寧に教えてくれたので、必要な書類をそろえて区役所に行きました。

 まず、障害者手帳の申請をしました。無事、受け付けてもらい、帰りかけたところで、ふと何かを忘れているような気がしたのです。やるべきことを事前に書き留めておいたのを思い出し、ノートを開いて、自立支援医療の申請を忘れていたことに気づきました。

 先ほどの窓口に戻り、担当者に「自立支援医療の手続きは、ここでできますか?」と聞くと、「できる」と言うのです。

 障害者手帳と自立支援医療は、それぞれ別の制度ですが、若年性認知症の人は、両方を利用する場合が多いのです。私の周りでも、片方だけ使っているという話は、ほとんど聞いたことがありません。

 だったら、障害者手帳を申請した時に、「こういう支援もありますが、どうしますか?」と聞いてくれればいいのにと思いました。認知症ですから、忘れることはよくあります。その点にちょっと配慮して、一言加えてくれるだけで、認知症の人が楽になるのに……と、残念に思いました。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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