認知症介護あるある~岡崎家の場合~
もっと知りたい認知症
杏里とあかねの「認知症介護あるある」(上) 教科書通りの義母×予測不能な父
ライターと漫画家が「認知症の親」を語り合ったら…
桜のつぼみが膨らみ始めた、まだ肌寒い春のある日、この連載の漫画を担当してくださっている日野あかねさんに久々にお会いする機会がありました。
実は日野さんも、同居していたお義母さんが認知症になり、2年前に他界されるまでの約6年間にわたり介護されていました。と、いうわけで、2人の話題はもちろん(!?)「認知症」についてです。さぞ「認知症介護あるある」話で盛り上がるのかと思いきや、同じ認知症介護の話をしているにもかかわらず、「えー、そうなの!?」とお互いに驚いてばかりの展開に……。
同じ認知症? 実は原因が違う
「認知症」と一口に言っても、原因となる疾患により、表れる症状はさまざまです。一番多いのは、「アルツハイマー病」が原因の「アルツハイマー型認知症」ですが、父さんは脳出血による「脳血管性認知症」です。日野さんのお義母さんは、脳梗塞で倒れた後、少したってから認知症の症状が出てきたそうなのですが、診察する医師によって、「アルツハイマー型認知症」あるいは「レビー小体型認知症」と見解が分かれたといいます。
3月12日更新の記事で、父さんは、「感情失禁」という脳血管性認知症の人によくみられる症状により、ちょっとしたことでも涙を流す人になってしまった……というエピソードを紹介しました。
一方、日野さんのお義母さんは認知症になってから、まるで人形のように1か所にとどまり、顔からは感情がなくなってしまったそうなのです。そのため、日野さんは私の原稿を読んで、「同じ認知症の人でも、こんなに違うのか」と、驚きながら漫画を描いたといいます。
病気によって異なる症状
認知症を扱う本やテレビ番組では、特徴的な行動として、「通帳をどこにしまったか忘れてしまい、家の中を探し回る」「今はしていない仕事に行こうとする」などが挙げられることが多いのですが、日野さんのお義母さんは、それにことごとく当てはまるのだそうです。
そのことを日野さんは「教科書通り」と言っていました。「教科書通り」なので、本やテレビで紹介されている通りに対処すれば、お義母さんを混乱させることなくうまく介護ができたといいます。
この話を聞いて、父さんはほとんど「教科書通り」ではないことに改めて気づかされました。父さんは、今は母さんがお金の管理をしていることをわかっているし、仕事をやめたことも理解して、毎日デイサービスに通うのを楽しみにしています。認知症の人には難しいと言われる、新しい出来事や変化を脳にとどめることができるのです。
それなのに時折、大好きな孫の名前を忘れてしまうのです。どこまで覚えていて、何がわからないのかが「教科書通り」でないため、私と母さんは、20年間ずっと試行錯誤しながら介護をしている状態です。
日野さんのお義母さんには、実際には存在しないものが目の前にあるように見える幻視があったというのも、うちの父さんとは大きく違う点です。幻視は、レビ―小体型認知症によくみられる症状で、お義母さんはよく、死んだ愛犬の姿などを見ていたそうです。
介護の方法もいろいろ
たった2人の認知症の人を比べただけでも、こんなに違うところがあるのです。日野さんのいうところの「教科書通り」な行動は、多くのケースであるとしても、父さんのように、典型的とは言えない症状や行動がみられる人も多く、まさに十人十色なのです。
ですから、介護法もひとつではありません。「そんなところも”認知症介護あるある”だね」と、日野さんと変なところで共感し合ったのでした。
次回も日野さんとの「認知症介護あるある」話は、続きます。(岡崎杏里 ライター)
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