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「重症ぜんそく」に分子標的薬治療…原因物質を無力化

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「重症ぜんそく」に分子標的薬治療…原因物質を無力化
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 36年前から重いぜんそくに悩まされてきた東京都世田谷区の女性(72)は、ぜんそく発作の原因となる物質の働きを抑える分子標的薬の注射を昨年3月から受け始め、症状が劇的に改善した。近年、重症のぜんそく患者に対する分子標的薬が登場し、治療の選択肢が広がっている。(原隆也)

対症療法が基本

 ぜんそくは、ほこりやダニといったアレルギー物質(アレルゲン)などによる炎症で気管支が狭くなる。せき込んだり、呼吸に伴い「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がしたりするぜんそく発作を繰り返す。

 治療は、気管支を広げる薬と炎症を抑えるステロイド薬を吸入する対症療法が基本。発作が多くなるにつれてステロイドの量を増やし、改善すれば減らす。ところが、これらの薬で症状をコントロールできない重症患者もいる。全国で約800万人と推計されるぜんそく患者のうち、5~10%が重症とみられている。

 そうした重症患者の治療薬として登場したのが分子標的薬。体内の原因物質にくっついて無力化する。

 2009年に初めて発売されたのが「ゾレア」(商品名)。ぜんそくを引き起こすIgEと呼ばれる抗体は本来、外敵を攻撃する役割があるが、アレルゲンと一緒になって免疫細胞「マスト細胞」に結合すると、炎症物質を出させる。ゾレアはIgEにくっつき、マスト細胞との結合を阻んで炎症物質の放出を抑える。市販後調査で6割以上の患者に効果があったとされ、15年版の「 喘息ぜんそく 予防・管理ガイドライン(指針)」でも治療薬に位置づけられた。

 16年には「ヌーカラ」(同)も発売された。たばこの煙や風邪のウイルスなどが、IL―5(インターロイキン―ファイブ)という免疫に関わる物質を活性化し、炎症を招く 好酸球こうさんきゅう を気道に呼び寄せることによってもぜんそくは引き起こされる。ヌーカラはIL―5にくっつき、その働きを抑える。

 また、好酸球自体を除去する新たな分子標的薬も承認され、発売された。

「体調は雲泥の差」

 女性は1982年の夏、突然せき込んで呼吸困難になり緊急入院した。ぜんそくと診断されたが、原因は分からなかった。ステロイド薬を服用すると症状が和らぐが、副作用の心配から薬の量を減らすと症状が重くなる悪循環が続いた。2年前から、せきで会話が続かなくなるなど症状が悪化し、山王病院(東京都港区)に転院。アレルギー内科の足立満さんに分子標的薬の使用を提案された。

 女性はヌーカラを月1回注射。「ひどかったせきやたん、息苦しさがなくなった。体調は以前と雲泥の差です」と声を弾ませる。

 4年前からぜんそく発作に悩む東京都港区の男性会社員(40)も、約1年前からゾレアの注射を受け始めた。以前は会社での企画説明時などにせきが止まらなくなるのが心配だったが、今はぜんそくを意識せずに過ごせているという。

 ただし、分子標的薬は薬価が高く、対象は重症患者に限られる。注射の回数や薬の量、収入によって医療費は変わるが、患者の負担は軽くない。自治体によっては助成制度がある。

 足立さんは「これまで治療が難しかった人も、健康な人と同じような生活に戻れる」と話している。

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