心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
「ゆっくり進行する疾病」は「あまり進行しない病気」?…医師教育の問題点
みなさんは、病院で診察を受けた時、「この先生、自分の病気の行く末を本当にわかっているのだろうか」と疑ってしまうことはありませんか。
「病気とどう付き合うか」…つい、おろそかに
眼科の現場で、ゆっくりと進行する病気としてよく知られているのは、「網膜色素変性」、正常眼圧緑内障を含む「開放 隅角 緑内障」、強度近視による「網膜脈絡膜萎縮」などです。
こうした病気を持つ患者について、医師が3,4年の間、経過をみても、検査上明らかな進行が認められなかったり、患者本人も進行を自覚していなかったりすることは、よくあります。それゆえに、医師も本人も病気を重大視せず、治療や生活習慣の改善など、「病気とどう付き合うか」についての対策が、ついおろそかになってしまうのです。
そうしているうちに病気が進行して、患者が生活の中で次第に不自由になっていくことになりかねません。
大学病院などでの修業…一人の患者を長期間みる機会はまずない
なぜ、医師は、ゆっくりと進行する病気を重大視しないのでしょうか?
原因のひとつに、若手医師が修業中に受ける臨床教育の環境が考えられます。
医師としての第一歩を踏み出す研修先の病院の中でも、特に大学病院は、急性の病気や、重い病気の患者を強く意識しています。様々な難病など、ゆっくり進行していくような慢性の病気を研究課題としている施設は別として、大学病院では、急性期の治療が終わって治療方針を決めると、一般の病院や医院に患者を戻します。
大学病院で担当していた医師は、「その後の容体は安定しているのだろう」と何となく、考えてしまいがちです。
また、大学病院や総合病院などに勤める若手医師は2,3年以内に、医局の人事異動で別の関連病院や研究施設に派遣されることが多いものです。必然的に、一人の患者さんを10年、20年と長期にわたって診る機会はまずありません。
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