在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活
医療・健康・介護のコラム
体内のコレステロールを一定に保つために
20年ほど前の話ですが、女子栄養大学に入学してしばらくした頃、私は「大変なところを選んでしまった」と少し後悔していました。栄養学だけでなく、生化学や解剖生理学などの医学的な授業が目白押しで、正直に言ってチンプンカンプンだったのです。しかし、栄養学や食事療法を学ぶ上で「土台」となる大切な知識です。文献を調べてもわからないことがあったときは、研究室を訪れて教授に直接質問をしたり、医学辞典で専門用語を調べたりしながら必死に学びました。
当時の授業で、一番記憶に残っているのは「解剖生理学」の授業です。学期末の試験が大変難しいことで有名なK教授の口癖は「ホメオスターシス」でした。毎回といっていいほど、「人間の身体は、素晴らしいホメオスターシスによって維持されているのであります!!」と熱く指導されていたのを思い出します。
「ホメオスターシス」は「恒常性」と直訳されますが、外の環境や体内の生理的な変化があっても、体内の機能などを調節して、常に一定の状態に保つ働きのことです。例えば、水分摂取量が少ない場合は尿の量を調整して、体内の水分量を一定に保つといった具合です。血糖値や体温も、私たちが特に意識をしなくても、ホルモンなどの働きにより一定に保たれていますね。
体内のコレステロール量調節にもホメオスターシスが
コレステロールは、体内にどのくらい存在するかご存じでしょうか。体重60キロの人の場合は体内におよそ30グラムのコレステロールがあるとされています。そして、血液(血しょう)中のコレステロールはそのうちの4.5グラム程度とわずか鉛筆1本分ほどの重さです。人間は食べ物から取るだけでなく、自分の体内でもコレステロールを作っていますが、血しょう中のコレステロールの量が多すぎたり少なすぎたりすることで、私たちの身体に大きな影響があります。
食事から摂取するコレステロールは、食べる内容にもよりますが1日300ミリグラム程度です。個人差はありますが、食事由来のコレステロールの吸収率は40~60%ですので、50%の場合は150ミリグラム程度になります。そして、「これでは少ない」となった場合は、体内で作られるコレステロールが増えます。つまり、コレステロールのホメオスターシスが働くわけです。
厚労省が発表した「日本人の食事摂取基準2015年版」を開いてみると、体内で1日に作られるコレステロールは、体重1キロあたり12~13ミリグラムとされています。体重60キロの方は、約700~800ミリグラムとなります。食べ物から吸収される量と比較すると、体内で生成される分の方がかなり多いことがわかります。同書では、「コレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない」と明確に記載されています。
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