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介護職員の高齢者虐待…不適切ケア、職員研修で防ぐ

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虐待件数5年で3倍に 感情コントロール学ぶ

介護職員の高齢者虐待…不適切ケア、職員研修で防ぐ

虐待防止に関する研修を受ける中途採用の職員。車いすに長時間座るつらさを体感するため、車いすで受講している(3月6日、福島市の生愛会ナーシングケアセンターで)

 介護職員による高齢者虐待が5年間で3倍に急増している。介護現場の多くは深刻な人手不足で、余裕のない職場環境が背景にあるとされる。大きな事件に発展する前に、どう「虐待の芽」を摘むか。現場を訪ねた。

 「仕事が山ほどあるのに、認知症が重い1人の利用者にかかりきり。そんな時、冷静でいられますか?」。3月6日、福島市内の老人保健施設「生愛会ナーシングケアセンター」で開かれた虐待防止研修。運営法人の本間達也理事長(58)は、中途採用の職員ら7人に語りかけた。

 研修は昨年12月、職員が利用者の腕に内出血を見つけたことがきっかけで始まった。利用者は「4~5日前にトイレで転んだ。男性職員が一緒だった」という。虐待とまでは言えない事案だが、全国老人保健施設協会で虐待防止などを目的とした「リスクマネジャー」の養成を担当する本間理事長は、対応を急いだ。

 すぐに施設内に調査委員会を設置。他の職員らからも話を聞くと、この男性職員について、「言葉遣いが乱暴」「ナースコールを取らない」など不適切なケアが浮上した。職員は自ら退職を申し出た。

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 生愛会職員でリスクマネジャーの佐藤若奈さん(40)は、「大きな虐待事件が発生する前段階に、多くの『不適切なケア』がある。この時点で職員に重大さを認識してもらうことが大事」と強調する。

 生愛会では3月までに6回の研修を実施し、全職員に今回の経緯を説明。教員など感情労働とされる他の職種での取り組みも調べ、ケアに苦労した事例を職員同士で共有し、イライラしたらその場をいったん離れるなどの対応方法を話し合った。

 本間理事長は「重い認知症の人が増え、ケアはますます難しくなる。虐待に至る経緯を分析し、職員が感情のコントロール方法を身につける必要がある」と話す。

深刻な人手不足、ストレスに

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 厚生労働省が3月に公表した調査結果によると、介護職員が行った高齢者虐待は、2016年度に全国で452件。06年度の調査開始以来、最も多かった。

 介護職員らで作る労働組合が16年に組合員に行った調査では、虐待の主な原因として、「業務の負担が重い」「仕事上のストレス」「人材不足」が挙がった。低賃金や過重労働のイメージが強い介護業界では人手不足が深刻化し、有効求人倍率は昨年11月から4倍を超えている。少ない人数で過重な仕事をこなし、職員がストレスを抱えるという悪循環が浮かび上がる。

 ある大手介護事業者は、「『1年に何回も転職を繰り返している』『約束の面接時間に来ない』など、明らかに不安を感じる応募者でも採用せざるを得ない。人手不足で採用後の育成もままならない」と明かす。

 高齢者虐待に詳しい山田祐子・日本大教授は、「虐待した職員個人の問題で終わらせず、組織の風土に問題がなかったか分析が必要。自治体や業界団体なども積極的に研修を行い、出席しない事業者に自治体が重点的に指導監査を検討するなど、外部の目を入れる機会を増やすのも有効だ」と指摘している。

 (田中ひろみ、大広悠子)

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感情のコントロール方法

かっぺのんちゃん

本日介護施設に出勤した際、先輩職員リーダーにおはようございます❗と挨拶したところ無視され、タイムカードを押し休憩室に行くとリーダーがロッカーの前...

本日介護施設に出勤した際、先輩職員リーダーにおはようございます❗と挨拶したところ無視され、タイムカードを押し休憩室に行くとリーダーがロッカーの前にいたので再び声をかけたのですが無視されました。その場を離れて行ってしまったので、とても気分的に嫌な思いをしました。そんな分別のない対応に1日嫌な思いで周りに不愉快な思いで迷惑かけたくないと思い、帰って来てしまいました。帰らず、利用者様の介護をするべきだったのでしょうか?いら立ちをコントロールするべきだったのか教えて下さいませんか?

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