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保育所に入れない(2)保育士10人退職「休園困った」
金銭的支援 自治体格差も
保育士が足りず、保育所を休園するケースまで出ている。
「転園先として示された保育所は遠くて、送り迎えできない。どうしてくれるのか」。3月下旬、横浜市鶴見区の認可保育所「寺谷にこにこ保育園」で開かれた保護者説明会。集まった保護者は、困惑した表情を浮かべた。この保育所が、保育士不足を理由に2018年度末で休園することを決めたためだ。
同市などによると、保育士14人のうち10人が、家庭の事情などで3月で退職。国の定める保育士の配置基準を満たせなくなった。4月以降は新規の受け入れはせず、1~2歳児のみ預かって年度末までに順次転園させるという。残る3~5歳児は市の調整で市内の認可保育所などに転園することになった。
だが、休園が知らされたのは3月のこと。すでに4月入所に向けた市内の認可保育所の1次選考は終わっていた。32歳の男性は、市の調整で長男の転園先が決まったが、「子どもが友達と離れるのを嫌がっている。こんな終わり方になる前に、もっと早く手を打てたはず」と嘆く。
受け入れる子どもの数を減らすケースもある。
沖縄県浦添市の公立保育所では17年、定員が380人のところ、保育士が足りず350人までしか受け入れられなかった。
保育士の人手不足感は強い。今年1月の保育士の有効求人倍率は3.38倍で、全職業の平均(1.52倍)を上回る。背景には、子どもの命を預かる責任の重さに比べ高水準とはいえない処遇がある。民間の保育士の平均賃金は、全産業平均より8万円ほど低い約22万円だ。
現場も疲弊している。これまでに3か所の保育園で働いてきた横浜市の女性保育士(46)は、「残業が当たり前の世界」と話す。
保護者に毎日渡す連絡帳の記入や、園内行事に使う用品の製作など、保育以外の作業は膨大。子どもの昼寝中や自身の休憩時間を当てても終わらない。残業しても、残業扱いにならない園もあった。
こうした事情から、資格があるのに保育士として働いていない潜在保育士は約86万人いるといわれる。
読売新聞が2~3月に行った自治体調査では、家賃の補助など、多くが保育士確保に乗り出していることがわかった。だが、金銭的支援には“弊害”もある。
茨城県守谷市などで保育所4園を運営する社会福祉法人の担当者は「行政の補助が手厚い自治体には、自助努力ではとても太刀打ちできない」とこぼす。
園がある茨城県南部は、千葉県松戸市など保育士への補助が手厚い自治体と近接している。しかし、園のある自治体の支援は比較的手薄。これを補おうと、法人負担で月3万円までの家賃を補助しているが、それでも、月給は3万~4万円の差がつくという。
保育政策に詳しい小崎恭弘・大阪教育大准教授は「どれだけお金をかけられるか、自治体間で不毛な競争になっている。国が一律に処遇改善を進めることが大切」と話している。
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