文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

yomiDr.編集室より

医療・健康・介護のコラム

在宅死の時代、家族と医療・介護職が共に悼む場

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
id=20180413-027-OYTEI50007,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

亡くなった夫の主治医(手前左)と語り合う女性。「主人は、先生とおしゃべりするのが大好きでした。久しぶりにお会いして、思い出話に花が咲きました」

「疑似家族」が支える看取り

 利用者が亡くなると、家族と訪問看護ステーションのつながりは途切れてしまいます。「はーと」の木戸恵子代表(53)は、「気落ちして、閉じこもってはいないか」などと家族の様子が気になっていても、なかなか顔を合わせる機会はないといいます。

 看護師や介護職員は、精いっぱいやってきたとしても、利用者を看取みとった後に「本当にあれで良かったのか」と、もやもやとした気持ちが残ることも多いそうです。「遺族会」で家族の声を聞くことで、自分の働きを振り返って自信を持ったり、改善すべき点を見つけたりすることができるのです。

 少し時間がたってから、落ち着いて故人を悼むことが、家族と職員の双方にとって、身近な人を亡くした苦しみを癒やす「グリーフケア※」にもなっています。

 核家族化と少子高齢化で、家族の人数が減り、年齢も上がっています。医療・介護職が家族と一丸にならなければ、「最期まで自宅で過ごしたい」という患者の願いをかなえられない時代です。「ご家族と職員は、一つのチームであり、疑似家族のようなもの。亡くなった方を一緒に悼む場があってもいい」と木戸さんはいいます。

 ※グリーフケア:大切な人を亡くし、悲嘆に暮れている人を支えるケア。

十分な弔いが高める「死の質」

 近年は葬儀の簡略化が進み、近親者だけで行う「家族葬」や、さらには通夜や告別式を行わず、遺体を火葬するだけの「直送」も一般的になってきました。その一方で、終活・葬祭情報サービス会社「鎌倉新書」(東京都中央区)が2017年に行った調査では、約45%の人が「きちんと弔えなかった経験がある」と回答しています(第1回終活<ライフエンディング>に関する実態調査)。現代では、「故人を弔いたい」という気持ちを持ちながら、その思いが満たされない場合も少なくないようです。

 古くは、ネアンデルタール人が、死者に花を供えて弔ったとも考えられているそうです。彼らは私たちの直系の祖先ではないようですが、亡くなった人を悼む心は、太古の昔から人類に備わっているのかもしれません。

 「超高齢社会」の先には、最大で年間170万人が亡くなる「多死社会」が待っています。これまで以上に「死」の在り方が問われる中で、日頃の取材を通じて、「『よりよい死』とは、去りゆく人だけのものではなく、残される人が、その先の人生をしっかりと歩んでいくためのものでもある」と感じています。そして、十分な弔いが、見送った側にとっての「死の質」を高めるとも思うのです。

 国は、病院のベッドを減らす方針を示しており、今後、生活の場で看取られる人が大幅に増えると予測されています。家族の枠を広げ、人生の締めくくりを共に支えた人たちが故人を悼む「遺族会」が、新しい追悼の形として広がっていくかもしれません。〔飯田祐子 ヨミドクター副編集長〕

iida-prpf2

飯田 祐子(いいだ・ゆうこ)
ヨミドクター副編集長
1996年入社、八王子支局、文化部などを経て、2008年から社会保障部で高齢者の介護・医療を担当。12~14年、東北総局(仙台市)で、東日本大震災被災地の福祉と地域医療を取材。17年4月から現職。

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

yomiDr編集室よりver03

yomiDr.編集室より
ヨミドクターの編集担当者が、小耳にはさんだ健康や医療の情報をご紹介。お勧めのコラムに込めた思いなどもつづります。

yomiDr.編集室よりの一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

最後の時間に寄り添うのは誰が適切なのか?

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

共有するのは時間か、空間か、価値観か、そうやって考えると、看取りのパートナーとして医師という専門職は時に不適切なのではないかとも思います。 もっ...

共有するのは時間か、空間か、価値観か、そうやって考えると、看取りのパートナーとして医師という専門職は時に不適切なのではないかとも思います。
もっと言えば、距離感と関係性が難しい。

IT化や医療の高度化によって、患者さんに寄り添うことと専門家として患者と向き合うことの乖離がすすみ、一人の人間が複数の思考回路や立場役割を使い分けるのがますます難しくなってきました。

専門医ではないですが、画像診断というマイナーで先進な領域の学習を続けているほどに、一般の感覚との乖離に気づかされます。

医療人の家系でない人間が、医療の道に足を踏み入れる事の難しさはそこにもあると思います。
今後、徐々に塗り替わると思いますが、閉鎖空間の常識は一般常識と違います。
どちらが医学的や法律的に正しいかではなく、どちらが人の理解や心に優しいかという問題もあって、他の分野ほど労働も合理性に一気に舵を切れません。

看取りのパートナーが医療人ではなく、価値観の近い仲間であるなら、医師や家族とは違うグループ形成の形もあるのかもしれないですね。
おそらく、答えがあるというよりは、いくつかの答えの中から何を選ぶかという人生の選択の話になります。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事