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その医療 ホントに要りますか?

コラム

認知症の妄想、徘徊、暴言… それは薬のせいかもしれません

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 高齢化が進むにつれて、認知症の高齢者も増え続けています。治療には様々な薬が使われていますが、逆に薬が原因で認知症のような症状が表れることもあり、要注意です。

2025年には730万人が認知症に

 厚生労働省によると、認知症の高齢者は2012年に460万人に上り、25年には730万人になると予測されています。

 認知症は、脳の神経細胞が壊れ、記憶力や判断力が失われていく病気ですが、周囲の人が悩まされるのは、「物を盗まれた」といった妄想や、徘徊(はいかい)、暴言・暴力、イライラ・不眠などの症状です。これらは「認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)」と呼ばれています。

 BPSDは、生活環境が変わったりした場合に起きやすくなりますが、薬が原因で起きることも少なくありません。

抗不安薬を処方され悪化 暴力を振るうように

 東京都の89歳の男性は、7年ほど前に認知症と診断されました。その後、不眠、めまいなどの症状に合わせ、様々な薬を飲むようになりました。

 男性は以前、穏やかな人柄でしたが、だんだん怒りっぽくなってきました。徘徊もひどくなり、1日に何度も家を出ては、妻が捜し回ることが続きました。

 かかりつけ医に相談すると、抗不安薬のデパスなど、さらに2種類の薬が追加されました。抗不安薬は、不安感を抑えて精神状態を安定させる効果があるとされる薬です。

 ところが、症状は良くなるどころか、さらに悪化しました。夜中の2時か3時頃に目を覚ますと、大声を出したり、ベッドのへりをドンドンたたいたりして、妻は眠れません。ついには暴力を振るい、興奮して妻を突き飛ばして骨折させてしまいました。

薬を17種類から4種類に減らすと穏やかに

 家族は、在宅医療で多くの認知症の高齢者を診ている「たかせクリニック」(東京都大田区)に訪問診療を依頼しました。

 理事長の高瀬義昌医師が訪問し、男性が服用している薬を調べたところ、抗不安薬など向精神薬2種類のほか、血圧降下剤3種類、胃腸薬4種類、前立腺肥大症、脂質異常症の薬など、合わせて17種類にも及んでいました。この男性は、それまで三つの医療機関にかかっており、それぞれの医療機関が互いにどんな薬を出しているか知らずに、薬が増えていったようです。

 高瀬医師は、それらの薬をいったん全てやめ、新たに認知症治療薬、血圧降下剤など4種類の薬を処方しました。急にやめると症状が悪くなる薬もあり、本来は少しずつ減らしていくのですが、暴力的な行動を早急に止める必要があると考えて、中止したのです。

 すると、男性はその晩から朝までぐっすり眠り、翌日にはデイサービスに通うようになりました。怒りっぽさが消えて穏やかな表情に戻り、暴力も振るわなくなりました。好きな民謡「佐渡おけさ」を歌い、趣味の尺八も吹くようになったといいます。

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tanaka200

田中秀一 (たなか・ひでかず)

 医療情報部(現医療部)、社会保障部、論説委員、編集局デスクを経て現職。長期連載「医療ルネサンス」を18年担当、現代医療の光と影に目を凝らしてきた。「納得の医療」「格差の是正」をテーマとしている。

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1件 のコメント

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はしご受診の弊害

猫屋犬君

複数の医療機関にかかることを「はしご受診」っていうんでしたっけ。 でも、これはかかりつけ医を持つとなくなります。あとお薬手帳を医師に見せるのも大...

複数の医療機関にかかることを「はしご受診」っていうんでしたっけ。
でも、これはかかりつけ医を持つとなくなります。あとお薬手帳を医師に見せるのも大事。
自分が常時服用している処方薬があるのでお薬手帳か処方薬の一覧表は必ず持参します。
でないと持病のある人間にとって怖いことになるの分かってるので。
もちろん主治医には服用した薬は報告します。処方箋を書くのは医師。なのでお薬手帳経由で連携をとってもらうのはとても大事だと思います。

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