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髪の震えで音伝達「オンテナ」、字幕流す眼鏡も…耳の不自由な人に「観劇機器」

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髪の震えで音伝達「オンテナ」、字幕流す眼鏡も…耳の不自由な人に「観劇機器」

 障害や高齢などで耳が不自由な人が舞台鑑賞や映画を楽しめるよう、音を文字や振動に変えて伝える機器の開発が民間で進められている。札幌市の女性(50)は2月、セリフや歌詞が表示される「字幕グラス」を初めて装着して観劇し、「物語が同時進行で理解でき、感動した」と喜んだ。(安藤奈々)

手話通訳や字幕なく…物語の進行、理解困難

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 耳が不自由な人にとって、音声によって伝わるセリフなどの情報なしに、物語の進行を理解することは困難だ。

 聴覚・視覚障害者らへの観劇支援に取り組むNPO法人「シアター・アクセシビリティ・ネットワーク」が聴覚障害のある20歳代以上の男女185人に行ったアンケート調査によると、「舞台鑑賞に行ったことがない」と答えた人は66人。主な理由に「手話通訳や字幕がないから」「セリフが聞き取れず、内容の理解が難しい」が挙げられた。

字幕グラス、劇団四季「ライオンキング」で導入

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 活用が期待されている字幕グラスは、眼鏡型で、装着すると、目線の下の方に文字が浮かび上がって見える。あらかじめ、台本を専用のコントローラーに読み込ませ、役者の声や音楽に合わせて、自動的にセリフや歌詞などを字幕で流す。

 2月に劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の札幌市公演で導入された。試演会に訪れた同市の女性は、1歳で耳が不自由になり、普段は補聴器をつけて生活している。今まで観劇の際は、事前に原作を読むなど予習して、想像で補いながら見なくてはならなかった。字幕グラスを使用し、「内容がよくわかったので、共感しながら楽しめた。今度は友人と一緒に来たい」と話した。

 貸し出しは1台2000円で、千秋楽の5月27日まで。訪日外国人ら向けに、英語や中国語などの多言語字幕も表示できる。聴覚障害者は身体障害者手帳の提示で無料で借りられる。今後、他の公演での導入も検討する。

 技術提供をしている「エヴィクサー」(東京)によると、字幕グラスは映画や伝統芸能の分野にも活用を広げていくという。

「健聴者も一緒に使って楽しんで」

 一方、髪の毛を震わせることで音を伝えるユニークな機器も開発されている。富士通の「 Ontennaオンテナ 」はヘアピン型の装置で、内蔵マイクが拾った音を約260段階の振動に変換。着けた人はリズムや音の大きさを感じられる。イヤリングやネックレス型も検討されている。

 開発者の本多達也さん(27)は大学時代、聴覚障害の男性と友人になり、「彼に音を届けたい」と考えたことをきっかけにオンテナを思いついた。福祉機器にはあまりみられない、デザイン性の高さも特徴だ。

 現在、楽器の演奏やダンスなどを教わる特別支援学校の聴覚障害の子に装着してもらい、感想を聞くなどして改良を進めている。本多さんは「健聴者も一緒に使って楽しんでもらいたい」と話し、今年度中の製品化を目指す。

 赤坂虎の門クリニック(東京)耳鼻咽喉科の熊川孝三さんは「補聴器だと、劇場など広い会場では、隣の人の話し声など、観劇に必要ない音も拾いやすい。字幕グラスやオンテナなどの機器は、手軽に使え、情報を補完する役割が期待できる」と話す。

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