文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

黒目が白くなってきたら、本当に「白内障」?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

網膜や視神経の病気でも「白っぽく見える」

id=20180411-027-OYTEI50012,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

 診察したところ、確かにYさんには白内障はありましたが、年齢相応といえる状態でした。

 ただ、眼底検査を行ったところ、網膜の中心にある「黄斑部」の状態が気になりました。さらに網膜の断層写真を撮影したところ、Yさんの網膜は厚くなっており、表面が平らでなくなっていました。「黄斑上膜(黄斑前膜)」という病気でした。 

 これも加齢で起こる病気で、珍しくないものです。網膜、つまり写真機のフィルムにあたる部分が厚ぼったく凸凹になっているので、物が (ゆが) んで見えたり、視力が低下したりします。

 私がそう説明すると、Yさんは「でも、白内障を手術すれば、今白っぽく見えているのは取れるんですよね」と返してきました。「白っぽく見えるのは、文字通り白内障のせいだ」と思いこんでいたのです。

 でも、それは違います。

 網膜や視神経の病気でも「白っぽく見える」ことはよくあるのです。私は「一概に、そうは言えない」と答えました。

 結局、Yさんは、白内障の手術をもう少し待つことにしました。

 一方、黄斑上膜は、すぐに治療した方がいいでしょうか。手術で視力が上がることもありますが、白っぽく見える状態は完全には取りにくいのです。こちらも手術をするかどうかは、熟慮が必要です。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

心療眼科医・若倉雅登のひとりごとの一覧を見る

最新記事