心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
黒目が白くなってきたら、本当に「白内障」?
網膜や視神経の病気でも「白っぽく見える」
診察したところ、確かにYさんには白内障はありましたが、年齢相応といえる状態でした。
ただ、眼底検査を行ったところ、網膜の中心にある「黄斑部」の状態が気になりました。さらに網膜の断層写真を撮影したところ、Yさんの網膜は厚くなっており、表面が平らでなくなっていました。「黄斑上膜(黄斑前膜)」という病気でした。
これも加齢で起こる病気で、珍しくないものです。網膜、つまり写真機のフィルムにあたる部分が厚ぼったく凸凹になっているので、物が 歪 んで見えたり、視力が低下したりします。
私がそう説明すると、Yさんは「でも、白内障を手術すれば、今白っぽく見えているのは取れるんですよね」と返してきました。「白っぽく見えるのは、文字通り白内障のせいだ」と思いこんでいたのです。
でも、それは違います。
網膜や視神経の病気でも「白っぽく見える」ことはよくあるのです。私は「一概に、そうは言えない」と答えました。
結局、Yさんは、白内障の手術をもう少し待つことにしました。
一方、黄斑上膜は、すぐに治療した方がいいでしょうか。手術で視力が上がることもありますが、白っぽく見える状態は完全には取りにくいのです。こちらも手術をするかどうかは、熟慮が必要です。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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