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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち 松永正訓

医療・健康・介護のコラム

心臓の難手術に挑み――13トリソミーの子(5)難病の子に「お誕生おめでとう」と言って

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決心し手術 チアノーゼも心不全も消えた!

 じゅのちゃんは5歳になりました。これまで何度も命の危機を乗り越えてきました。それを見ていると、母親にはまるで、じゅのちゃんが「私は乗り越えられるよ、手術を受けたいよ」と言っているように感じられました。両親は気持ちを固め、A病院で手術に挑みました。

 手術は人工心肺を使ってじゅのちゃんの心臓の拍動を止め、心臓を切り開く大手術になりました。心臓の中の壁の穴や大血管の位置の異常をすべて正常に整えました。じゅのちゃんは手術を乗り切りました。

 手術から完全に回復した頃には、じゅのちゃんの顔や指先からチアノーゼが消えていました。心不全の症状もなくなり、水分制限も薬の服用も不要になりました。じゅのちゃんの心臓は完全に修復されたのです。

 じゅのちゃんは現在7歳。元気に特別支援学校に通っています。そして毎日少しずつ成長していく姿が、母親には感じ取れます。

 母親は言います。「娘の心臓手術の成功例が記録に残ることで、今後の参考になって、誰かの勇気になれればうれしいです。弱い命が淘汰(とうた)される時代に、もし、13トリソミーの赤ちゃんが生まれて来ても、赤ちゃんが周囲から『お誕生おめでとう。生まれてきてくれてありがとう』と言われる社会が来て欲しいですね」

「大切で愛おしい、わが家の天使」

 これまで13トリソミーの子の物語を連載してきました。13トリソミーの子の親が医療者にどういう気持ちを持っているか、最後に和花ちゃん(3歳)の母の言葉を紹介したいと思います。和花ちゃんは心房中隔欠損、多指症、無呼吸発作を持って生まれてきました。現在、心臓に負担をかけないように水分制限と服薬を続けています。

 「看護師さんたちはいつも満面の笑みで迎えてくれます。先生方はいつも、心配なことがある時はすぐに連れてきてくださいと言ってくれます。そういう一言がどれほど安心で心強いか。うちの子にも先生たちの気持ちが絶対に通じているはずです。弱いけれど、強い命を持ったうちの子に、どうか力を貸してほしいです。和花は障害を持っていても家族みんなに癒やしをくれる大切な、いとおしい子です。わが家の天使です」(松永正訓 小児外科医)

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いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

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松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。2018年9月、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)を出版。

ブログは 歴史は必ず進歩する!

名畑文巨(なばた・ふみお)

大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは 写真家名畑文巨の子ども写真の世界

名畑文巨ロンドン展報告

ギャラリー【名畑文巨のまなざし】

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