文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

心臓の難手術に挑み――13トリソミーの子(5)難病の子に「お誕生おめでとう」と言って

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 じゅのちゃんは、染色体異常の13トリソミーとして生まれ、また「両大血管右室起始症」という重い心奇形を抱えて誕生してきました。

 私たちの心臓は、右室の中に黒い血(酸素が少ない血)が入っており、この血液が血管(肺動脈といいます)を通って、肺に入ります。肺に入った血液は、黒い血から赤い血(酸素を含んだ血)に変わります。赤い血は左室に戻り、血管(大動脈と言います)を通って全身に向かいます。

 ところが、両大血管右室起始症では、肺動脈も大動脈も右室から出ています。つまり、黒い血が大動脈から全身へ流れるわけです。そのため酸素不足となり、チアノーゼが起きます。また、右室だけが働きすぎて心臓に負担がかかり、機能が低下して心不全の状態に陥ります。

 先天性心奇形としてはとても重篤と言えます。

手術のリスクを読みきれない

 じゅのちゃんはA病院で生まれました。A病院は、13トリソミーや18トリソミーの赤ちゃんに対しても積極的に治療をする病院でした。また過去には心臓手術をおこなった経験が何度もありました。A病院はじゅのちゃんの手術を前向きに考え、心臓カテーテル(血管造影)検査もおこないました。ただ、慎重に手術のタイミングを見計らっていました。

【名畑文巨のまなざし】ミャンマーの赤ちゃん(その1) ミャンマーでは、3世代ぐらいが同居する大家族が一般的です。1歳のAくんはダウン症。おばあちゃんや大おばあちゃんら、皆にかわいがられていて幸せそうでした。家族のカットが撮れたので、「次はご近所の方々と触れ合っているところを撮れませんか?」とお願いしてみました。「いいですよ」と快諾してくれて、おうちの前で撮ることになったのですが……。ミャンマー・ヤンゴン市にて(続く)

【名畑文巨のまなざし】
ミャンマーの赤ちゃん(その1) ミャンマーでは、3世代ぐらいが同居する大家族が一般的です。1歳のAくんはダウン症。おばあちゃんや大おばあちゃんら、皆にかわいがられていて幸せそうでした。家族のカットが撮れたので、「次はご近所の方々と触れ合っているところを撮れませんか?」とお願いしてみました。「いいですよ」と快諾してくれて、おうちの前で撮ることになったのですが……。ミャンマー・ヤンゴン市にて(続く)

 その理由の一つには、やはり13トリソミーの赤ちゃんの生命はもろいこと、そして以前に13トリソミーの心臓手術をおこなったすぐ後に子どもが亡くなった経験があったからです。じゅのちゃんは顔や指先にチアノーゼがあり、1日に摂取する水分量も心臓に負担がかからないように制限が加えられていました。

 A病院の心臓外科医たちは、じゅのちゃんの病状と心臓手術のリスクの両方を見きわめようとしました。

 やはり13トリソミーの子どもでは、リスクを読みきれない。心臓や血管の壁がもろくて裂けてしまう危険がある。手術をきっかけに体が呼吸器に依存して、呼吸器を外せなくなるかもしれない。そういうことも医師たちは考えていました。

ほかの病院では「手術しません」

 じゅのちゃんの両親は、A病院に対して不満はありませんでした。しかし、ほかの病院の心臓外科医ならば、手術のリスクについてどう言うだろうかと考えました。そこで思い切ってB病院にセカンドオピニオンを求めてみました。B病院は小児の心臓手術をおこなう病院として、日本で最も有名な病院の一つだったからです。しかしB病院の返事は、「13トリソミーの子どもには手術しません」というものでした。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

inochihakagayaku200

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

matsunaga_face-120

松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)など。2017年11月、『子どもの病気 常識のウソ』(中公新書ラクレ)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたちの一覧を見る

最新記事