心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
片方の目がほぼ見えなくても「障害者」ではない?…「慣れれば大丈夫」ではない苦しみ
両目で見ないとつかみづらい「遠近感」…車の免許取得でハンデ
Oさんのお手紙ではさらに、「法における差別」を訴えています。
一例として、「深視力障害により自動車運転免許取得が一部制限されており、職業選択の自由の侵害につながる」と述べています。
深視力検査は遠近感を調べる検査です。本当に必要な検査であるのかは別にして、大型免許や普通二種の運転免許の取得や更新時に課されています。両目でみれば遠近感はつかめても、 片眼視 ではなかなか難しいでしょう。
ところが、「片眼視のハンデは慣れることで克服できる」などという専門家もいるようです。その見方には、どれだけの根拠があるのでしょうか。
わずかな錯覚や間違い、疲労度でも…今後の研究が必要
実は、両目で見られないことで生ずるわずかな錯覚や間違いや、または両目で見る時との疲労度の差が、車の運転だけではなく、日常生活にどれだけ影響するのかを検証する研究は、あまり行われていません。
今後は研究が必要だと思います。もし「片目だけでも慣れれば大丈夫」という結果になるならば、訓練方法を開発して、ハンデにならない対策をとるべきです。
一方、もし「両目でみている人よりも、生活上の問題が大きい」となれば、細かな数値による判定を行わなくても、障害として認定するように法改正をするべきではないでしょうか。
片目の生活で不自由さを強いられ、周囲にもなかなか理解されず、つらい思いをしている方々は、喜んで研究に協力してくれると思います。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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