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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

片方の目がほぼ見えなくても「障害者」ではない?…「慣れれば大丈夫」ではない苦しみ

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両目で見ないとつかみづらい「遠近感」…車の免許取得でハンデ

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 Oさんのお手紙ではさらに、「法における差別」を訴えています。

一例として、「深視力障害により自動車運転免許取得が一部制限されており、職業選択の自由の侵害につながる」と述べています。

 深視力検査は遠近感を調べる検査です。本当に必要な検査であるのかは別にして、大型免許や普通二種の運転免許の取得や更新時に課されています。両目でみれば遠近感はつかめても、 片眼視(へんがんし) ではなかなか難しいでしょう。

 ところが、「片眼視のハンデは慣れることで克服できる」などという専門家もいるようです。その見方には、どれだけの根拠があるのでしょうか。

わずかな錯覚や間違い、疲労度でも…今後の研究が必要

 実は、両目で見られないことで生ずるわずかな錯覚や間違いや、または両目で見る時との疲労度の差が、車の運転だけではなく、日常生活にどれだけ影響するのかを検証する研究は、あまり行われていません。

 今後は研究が必要だと思います。もし「片目だけでも慣れれば大丈夫」という結果になるならば、訓練方法を開発して、ハンデにならない対策をとるべきです。

 一方、もし「両目でみている人よりも、生活上の問題が大きい」となれば、細かな数値による判定を行わなくても、障害として認定するように法改正をするべきではないでしょうか。

 片目の生活で不自由さを強いられ、周囲にもなかなか理解されず、つらい思いをしている方々は、喜んで研究に協力してくれると思います。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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