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副作用情報、国が直接収集…厚労省がデータベース構築

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副作用情報、国が直接収集…厚労省がデータベース構築

 医薬品による副作用の疑いを迅速にキャッチするため、厚生労働省は4月1日から、製薬会社の報告任せではなく、直接医療現場から薬の処方状況や患者の検査情報などを収集し、分析できる「医療情報データベース」を本格運用した。対象は全国23病院の患者計約400万人分で、製薬会社や研究者も活用できる。

 医薬品医療機器法は、副作用が疑われる死亡や障害と、投薬の因果関係が否定できない事例が起きた場合、主に製薬会社に副作用情報として国に報告するよう義務付けている。しかし、医師が気付かない副作用疑いは、医療現場から製薬会社に報告されず、同様のケースが実際にどの程度の頻度で起きているのかなど、全体状況を把握することが困難だった。

 さらに最近では、製薬会社が同法に違反して、副作用事例を報告しないケースも相次いでいる。2014~15年には、大手製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)が国に報告していなかった副作用事例が8700件以上あったことが発覚した。昨年には「バイエル薬品」(大阪)が血栓症治療薬の副作用を把握していたにもかかわらず、報告していなかったことも明らかになっている。

 こうした状況を受け、厚労省は、製薬会社任せではなく、医療現場から患者の病名や投与された薬の量と期間、服用後の症状などの情報を収集し、個人情報などを秘匿した上で、症例を分析できる体制の整備を進めていた。厚労省の担当者は「医療機関から直接情報を得て分析することで、早期の対応につなげることが可能になる」とデータベースの狙いを説明する。

 データベースは、医薬品の審査などを行う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が管理する。医師が診察し、電子カルテに記入した患者の情報が集約され、厚労省や製薬会社、研究者などが使用料を支払ってデータを受け取って分析する。

 厚労省は「製薬会社も薬の販売後に行っている投与の実態調査の代替としてデータベースを活用することができ、コスト削減にもつながるのではないか」とし、データベースの幅広い活用を促していく方針だ。

薬害被害者が要望「運用大きな一歩」

 副作用の情報を迅速に集約するデータベースの活用は、薬害の被害者らの要望を受けたものでもある。

 汚染された血液製剤で多くの患者がC型肝炎に感染した問題を受け、薬害被害者や有識者で構成される第三者委員会が2010年にまとめた報告書は、「医療現場の安全対策を製薬会社に任せるだけでなく、行政が適切な対策ができるよう情報収集体制を強化すべきだ」と指摘し、データベースの活用を提案していた。

 薬害エイズ訴訟の大阪原告団代表で第三者委員会にも加わった花井 十伍じゅうご さんは「厚労省が能動的に情報を収集できるデータベースの運用は大きな一歩。ただし、製薬会社や医療機関が安全を第一に考え、誠実に取り組んでいくことが大前提だ」とクギを刺した。

 薬害問題に詳しい臨床・社会薬学研究所(埼玉県)の片平 洌彦きよひこ 所長は「過去の薬害は、重篤な副作用情報を軽視したために被害が拡大した事例が多い。製薬会社や国はデータベースを有効活用し、重篤な副作用の疑いは1例でも軽視せず、慎重に評価し素早く対応する姿勢が必要だ」と指摘している。

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