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かんだり、のみ込んだりする力が落ちると…全身の健康にも悪影響

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 かんだりのみ込んだりする力が落ちると、栄養不足から体の衰えにつながりかねない。口の機能低下を指摘された千葉市の女性(70)は、歯科医に教わった口や舌のトレーニングを毎日続けている。高齢化が進む今、口の機能を保つ重要性が注目され、4月からは、かむ力の検査などに保険が利くようになる。(米山粛彦)

口の衰え、栄養の偏り・エネルギー不足を起こし…

かんだり、のみ込んだりする力が落ちると…全身の健康にも悪影響

 人は物を食べるとき、唇を閉じて舌を動かし、食べ物を歯の上に置いてかみ砕くという動作を繰り返す。砕かれた食べ物は唾液によってまとめられ、舌の動きにより喉の奥に運ばれてのみ込まれる。

 高齢になると、口の周りの筋力が落ち、かむ力や舌を動かす力、のみ込む力が落ちやすい。虫歯や歯周病で、しっかりかめる歯が減り筋力低下が進むこともある。唾液の分泌量も減る。

 東京医科歯科大学高齢者歯科学分野教授の水口俊介さんは「高齢者は家族や友人との対話が少なくなり、人目を気にしなくなりがち。歯磨きや歯科の受診が減り、虫歯や歯周病のリスクも高まる」と指摘する。

 口の周りの働きが落ちてくると、硬い野菜や肉などが食べづらくなる。厚生労働省の調査では、70歳以上の3割強が「かめない食べ物がある」と回答した。口の衰えは栄養の偏りやエネルギー不足を起こし、全身の健康に悪影響を及ぼす。

 東京大学教授の飯島勝矢さん(老年医学)らが65歳以上の約2000人を対象に、かむ力や滑舌など口の働きと、全身の健康との関係を調べた。口の機能が低い人たちと問題のない人たちを約4年後に比べたところ、低い人たちは要介護認定を受けるリスクや死亡のリスクが問題ない人の2倍超となることがわかった。

「パ」「タ」「カ」連続発音で、舌・唇の働き計測

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 日本老年歯科医学会は、口の働きが低下した状態を「 口腔こうくう 機能低下症」と名付けた。判定条件は、〈1〉口の中の汚れ具合〈2〉湿り具合〈3〉歯全体でかむ力〈4〉舌や唇を動かす働き〈5〉舌で押す力〈6〉かみ砕く働き〈7〉のみ込む働き――の7項目だ。

 例えば、舌や唇の働きは、「パ」「タ」「カ」のいずれかを連続して発音し、1秒間に6回以上言えるか測る。舌の力は、空気入りの球を舌で押しつぶして計測する。7項目中3項目以上で基準から外れると、該当する。

 千葉市の女性はかむ力や舌の働きが落ちていた。同学会理事長で東京歯科大学教授の桜井薫さんから助言を受け、唇や舌の働きを保とうと、パやタの音を繰り返し発する訓練を自宅で続けている。「色々な物をいつまでもおいしく食べられるようでいたい」と話す。

 こめかみ周辺やえらの下のマッサージで唾液が出やすくなる。舌で押すとへこむ器具や、唇と歯の間に挟み外からひっぱる器具を使うと、舌や口の周りの筋肉を鍛えられる。

 口の衰えは気づきにくいが、食べこぼしや滑舌の悪化などがあれば、まず歯科医に相談するのが望ましい。桜井さんは「かみにくいものを避けず、しっかりかんで食べる習慣を若い頃からつけておくことが予防になる」とアドバイスする。

 厚労省は4月から、歯全体でかむ力を専用の機械で測る検査やかみ砕く機能の検査、口腔機能低下症の人へのマッサージ指導などに保険を適用する。

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