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障害児らの療育支援「放課後等デイサービス」甘い基準…異業種続々、ずさん運営も

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障害児らの療育支援「放課後等デイサービス」甘い基準…異業種続々、ずさん運営も

 障害児らの生活能力の向上のため、国などが利用料を負担する「放課後等デイサービス」(放デイ)に参入する事業者が各地で急増し、2012年の制度開始以来、昨年、初めて1万か所を超えた。発達障害児を中心に利用者も17万人に達したが、ずさんな運営や暴力で事業停止などの行政処分を受ける例が相次いでいる。

暴力・暴言

 「体にあざがある」

 堺市の事業所に子どもを預ける保護者から昨年、市に相談が寄せられた。調査の結果、男性職員が日常的に子どもに暴言を浴びせたり、腹をつねったりしていたことが発覚した。

 民家で発達障害がある小学生ら約10人を預かっていたが、この職員は保育や福祉の経験も知識も全くなかった。「おとなしくさせようと思ってやっていた」。市の調査に対し、職員はそう話し、悪びれる様子もなかったという。

 放デイは、「児童発達支援管理責任者」を常勤で置き、障害に応じた支援計画を立てて訓練などを行わなければならない。しかし、この事業所の管理責任者は、代表者が別に経営する訪問介護の仕事と兼務しており、支援計画も作っていなかった。

 代表者は「そんな規則は知らなかった」と説明。市は、事業所の指定を取り消し、支給した約4000万円の返還を求めた。

 過去に指定取り消しなどの処分を受けたのは大阪府内で12件、兵庫県内で7件。愛知県でも10件に上り、昨年末は、県内の会社が職員配置を巡る不正で約2億円の返還を求められた。東京や横浜市などで事業所を展開する会社も昨年、事業の一部停止を命じられた。

 厚生労働省によると、暴力や暴言など「虐待」と判断された事案も12年以来、自治体が把握しただけで123件に上った。

ビジネスチャンス

 問題の背景にあるのは、事業者が得る利益の多さと、運営基準の甘さだ。

 1回の利用料は、送迎付きで8000円程度。厚労省によると、他の障害者福祉事業の平均的な利益率は6%なのに対し、放デイは11%。さらに利用料は9割が公費負担で、安定的に利用者が見込める。

 職員に障害者や児童の支援経験は必要なく、福祉とは無縁の営利業者が多数参入。コンサルティング会社が「新たなビジネスチャンス」などとうたい、開業支援するケースも多い。

 処分を受けた大阪市の業者の登記簿には兼業する事業として、チケット販売、昆虫飼育、アスベスト除去工事などが215種類も記載されていた。

要件厳格化

 こうした状況を受け、厚労省は、職員配置の要件を厳格化。管理責任者には、障害者か児童の支援経験が3年以上必要とし、児童らに接する指導員にも資格や経験が要件に加えられた。昨年4月から新規の業者に義務づけ、それ以前に指定を受けた業者には今年4月から適用される。

          ◇

【放課後等デイサービス】  児童福祉法に基づく制度で6~18歳が対象。2012年の2540事業所から、17年4月現在で1万613事業所になり、利用者も当初の約5万人から大幅に増えた。身体、知的障害児もいるが、多くは発達障害児とみられる。保護者が自治体に申請し、必要と判断されれば利用できる。

保護者「施設の見極め困難」

 一方、多くの保護者は「放デイはなくてはならない居場所」と口をそろえる。

 発達障害児の場合、放課後は学童保育や習い事なども、他の児童とのトラブルの可能性を理由に暗に断られることがあり、制度開始前は受け入れてくれる場所がほとんどなかった。

 大阪府内の女性(45)は3年前から、長男(9)が放デイを利用。しかし、職員が子どもをどなりつけたり、ゲームをさせたりするだけの事業所もあり、預け先を転々とせざるを得ないという。多くは優良な事業所だとみられるが、事業所が職員の資格の有無などを保護者に開示する義務はない。女性は「親が良い施設を見極めるのは難しい」と話す。

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