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HPVワクチン、学会が「接種は必要」

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HPVワクチン、学会が「接種は必要」

 日本産科婦人科学会は3月12日、公式サイトで一般向けの情報ページ「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」を公開した。子宮頸がんの発生機序や治療などの基礎知識、国内外のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の状況および安全性の評価について解説している他、同学会のHPVワクチンに対する見解を表明している。

性交渉を経験する前に接種することが最も有効

 日本で、子宮頸がん予防を目的としたHPVワクチンの定期接種を積極的に勧めること(積極的勧奨)が中止されたのは2013年6月。およそ5年が経過したが、その副反応をめぐる議論は続いたままだ。

 これまで、日本産科婦人科学会は国に対してHPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を強く求める声明を4回にわたり発表してきたが、このたび一般に向けた情報発信も開始したことになる。

 同サイトでは、子宮頸がん検診(細胞診)では一定の割合で偽陽性が認められるのに対し、HPVワクチンはHPVへの感染自体を予防することで前がん病変・頸がんを発生させないようにする、初発(一次)予防であることを解説。現在使用可能なHPVワクチンは頸がんの約6~7割を予防できると考えられるため、(1)HPVワクチンと子宮頸がん検診の併用による予防が最も効果的である(2)ワクチンには既に感染しているHPVを排除する効果はないため、初めて性交渉を経験する前に接種することが最も有効である―の2点を強調している。

「多様な症状」は機能性身体症状

 また同サイトでは、国内外でHPVワクチンの効果がどのように示されているかも解説している。オーストラリア、英国、米国、北欧などでは、以前からHPVワクチン接種を国のプログラムとして導入している。フィンランドの最近の報告によると、ワクチン接種者では、HPVに関連して発生する浸潤がんが全く発生していないことが示されている。また国内でも、ワクチン接種者におけるHPV感染率の低下が相次いで報告されている。

 HPVワクチンの安全性については、世界保健機関(WHO)が「HPVワクチンは極めて安全である」との結論を発表している。同サイトでは、厚生労働省の専門部会が、「慢性疼痛や運動障害など、HPVワクチン接種後に報告された”多様な症状”とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられる」との見解を発表していることを紹介。さらに、厚労省研究班(祖父江班)の全国疫学調査から、HPVワクチン接種歴のない女性でも、接種歴のある女性で報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12~18歳の女性では10万人当たり20.4人)存在する一方で、HPVワクチン接種後に「多様な症状」が現れた場合、認知行動療法などを行っても回復しない人がいることも事実であるとしている。

科学的見地からHPVワクチン接種は必要

 さらに、同学会は「HPVワクチンの積極的勧奨は中断されているが、定期接種としての位置付けに変化はなく、公費助成による接種は可能である。接種後に重篤な有害事象が発生した場合は、予防接種法に基づく救済制度の申請が可能である」としている。

 そして最後に、「先進国の中でわが国においてのみ将来多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり命を落としたりするという不利益が生じないためには、科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要」との学会としての見解を表明。今後も、一般に向けて、子宮頸がんとHPVワクチンに関する科学的根拠に基づく正しい知識と最新の情報を発信するとしている。

 なお、同サイトには詳細版として「もっと知りたい方へ(Q&A、参考文献)」というPDFファイルへのリンクを設定しており、21ページにわたって詳細なデータや解説を示している。(あなたの健康百科編集部)

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