在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活
医療・健康・介護のコラム
せっかく日本で暮らしているのだから、おいしい海の幸でもっと健康に!
厚労省は健康増進法に基づいて、国民健康・栄養調査を毎年実施しています。昨年9月に公表された最新の調査結果(平成28年)から、様々なことが読み取れます。例えば野菜の摂取量は、20代が1日250gに満たない一方、70代は約300gです。世代によって、かなりの開きがあることが読み取れます。
気になる「魚介類」と「肉類」の摂取量推移
気がかりなのは、魚介類の摂取量がずっと減少してきていることでした。
平成18年を境に肉類と魚介類の摂取量が逆転してから、その差は開く一方です。
魚介類に多く含まれているDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸は、脂質異常症(高脂血症)の発症や重症化の予防に役立つことがわかっています。一方で肉類に多く含まれている飽和脂肪酸は、長期間取りすぎると血液中のLDLコレステロールを増加させ、動脈硬化などの血管の病気の原因となることがわかっています。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる重大な病につながる恐れがあります。
平成26年の調査によると、心疾患は日本人の死因第2位、脳血管疾患は第4位です。私は、日本人の「肉食化」がこれらの病気の発症に影響を与えているのではないかと考えています。
玄米菜食や粗食ではなく「魚介食」がおすすめ
そこで現代人には、一時期話題になった「玄米菜食」や「粗食」よりも、「魚介食」の食生活をお勧めします。日本は豊かな海に囲まれており、魚だけでなく、カキやアサリなどの貝類や、エビやカニなどの甲殻類、イカやタコなどが豊富に取れます。それらをおいしく食べる食文化があります。しかし、特に若い世代は魚介類を調理して食べる習慣が少なくなっているようです。
海産物は栄養が豊富なだけではなく、食事全体のエネルギー量を減らす効果もあります。
サンマやサバなどの脂が乗った魚や魚卵,内臓を除くと、肉類と同じ量を食べても魚介類はエネルギー量が少なくすむのです。
例えば、豚ひき肉を100グラム使った「メンチカツ」の場合、ひき肉の分だけで236キロカロリーになりますが、シバエビ100グラムを使った「 海老 カツ」にすれば約150キロカロリーも減らすことができます。
実は私は貝類やウニは苦手でした。特に見た目がグロテスクなカキは「食わず嫌い」でした。しかし、宮城県の松島でアツアツの「焼きガキ」を食べた時、プリプリの香ばしいおいしさに感動して大好きになり、それ以来、いろいろなカキ料理を楽しんでいます。カキのほかにも、最近になってそのおいしさに目覚めた魚介類がホヤです。
三陸の「食べる宝石」ホヤに魅せられて
市場に出回っているホヤは「マボヤ」という品種で、主に北海道や三陸沿岸部で養殖されています。
マンゴーのような外見で、中身も鮮やかなオレンジ色をしています。
三陸のホヤ養殖施設は、2011年の東日本大震災でほとんど全壊してしまいました。すぐ翌年には養殖が再開されましたが、かつての主な輸出先だった韓国が、福島第一原発事故による海洋汚染を理由に、2013年から8県からの水産物の輸入を禁止しているため、売れ残ったホヤが廃棄処分になっているというのです。被害から立ち上がり、ホヤを大切に育ててきた漁師にとって苦しい状況がまだ続いています。
私がホヤを知ったのは、結婚後に仙台に来てからです。先に仙台で暮らしていた夫はホヤが苦手で、「クセが強いから、食べない方がいいよ」と「先入観」を植え付けられていました。
しかしある日、気仙沼の復興商店街の居酒屋で「とれたてほやほやのホヤ」をいただく機会がありました。一口食べると、磯の香りが口いっぱいに広がります。冷えた日本酒と最高に合い、その晩はホヤをつまみについつい飲みすぎてしまいました。それからは私の好物の一つとなり、新鮮なホヤを味わえるお店を探すのが楽しみになりました。
先日は宮城県塩釜市のホヤ料理専門店「ほやほや屋」を訪れました。ホヤを使ったチーズ春巻きやかき揚げ、チャンジャ、ニラ炒め……。ホヤをおいしく食べるための工夫に感動したばかりです。
ちょっとした工夫で、日本人はもっともっと魚介類を好きになれるはずです。苦手な食材がある人でも、きっかけ次第で私のように「食わず嫌い」を克服できるかもしれません。
豊かな海に恵まれた日本で生活しているのですから、もっと魚介類を楽しんで、生活習慣病の予防と悪化防止に役立てていただきたいと願っています。(塩野崎淳子 在宅訪問管理栄養士)
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