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無痛分娩 安全策は(中)「守るべきは母子の命」

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神戸の遺族が訴え…厚労省研究班「提言案」に寄せて

無痛分娩 安全策は(中)「守るべきは母子の命」

Aさんの妻が亡くなり、新盆を迎えて遺影に手を合わせる実家の母(左)と姉。この後まもなく、入院中だった長男も亡くなった(2017年8月、神戸市で)

 無痛分 (べん) を巡る事故の続発をきっかけに設置された厚生労働省研究班は、安全のための提言案を一般市民に説明するため、3月4日に東京都内で公開講座を開いた。そこには、2015年に神戸市の診療所で起きた事故の後、妻子を失ったAさん(33)も参加していた。 (医療部 中島久美子)

 Aさんの妻(当時33歳)は、実家に近い「おかざきマタニティクリニック」で無痛分娩の処置を受けた直後に急変し、搬送先の大学病院で緊急帝王切開により長男を出産した。母子ともに意識不明で寝たきりの状態が続き、妻は昨年5月、長男も同8月に亡くなった。Aさんは再発防止を求めて厚労省や関連学会、研究班にそれぞれ要望書を提出している。

 Aさんと妻の姉(37)が読売新聞のインタビューに応じ、思いを語った。 

「安全対策」は骨抜きになってしまうでのは…夫

――提言案をどのように受け止めましたか?

 研究班は当初、「世界標準と同等レベルの安全対策」を目標にしていると聞いたので、実効性ある対策が講じられるものと期待していました。でも今は、結果として対策は骨抜きになってしまうのではないか、という強い懸念を持っています。

――なぜ骨抜きになってしまうと思うのですか?

 無痛分娩を受ける母子の視点がないからです。「今、無痛分娩をしている医療機関ができなくなる基準は作らない」という前提で議論が進んだのだと思います。たとえば、無痛分娩の麻酔ができる医師の認定制度に関する検討の仕方には違和感を覚えました。

研究班は認定制度のデメリットとして、

(1)現に無痛分娩を実施している医療機関や医師が資格を新たに取得するのが難しい

(2)資格取得が無痛分娩の条件になると無痛分娩を実施できる医療機関が激減する

(3)資格取得者のいる施設に希望者が集中して医療提供体制に悪影響を与える

……ということを挙げていました。これらは医療機関にとってはデメリットでしょうが、母子からみてもデメリットなのでしょうか?

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妻が自宅で使っていた妊娠カレンダーを見るAさん。「予定日まであと何日」と指折り数えていた

 しかも、認定制度の対象は「原則として若手医師に限定する」となっていました。「これから運転免許制度を導入するけれど、高齢ドライバーは免許がなくても運転できます」と堂々と宣言しているようなものですよね。現状維持へのこだわりを強く感じます。

――「若手医師に限定する」ということに対しては、研究班のメンバーからも異論が出ていますので、今後、再検討されるようです。

 今回、認定制度導入の是非について、医師を対象としたアンケートはあったようですが、妊産婦や一般の人に対する意識調査もしてほしいです。妊婦が「先生は蘇生ができますか」と聞いて、「大丈夫」といわれたとしても、本当かどうかわからないですよね。資格があれば目安になります。

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