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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

抗がん剤で「涙目」に…副作用は仕方ない?

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抗がん剤で「涙目」に…副作用は仕方ない?

 「抗がん剤に副作用があるのは当たり前。がん細胞を退治するには、正常な細胞が多少はダメージを受けても仕方がない」

 私が医師になった40年前はそれが常識でした。

 しかし、がんを患っている上に、副作用で苦しむのは非常に辛いことです。世界の製薬企業は、副作用の少ない薬の開発に大きな予算を投じてきました。

 戦後開発された代表的な抗がん剤「5-フルオロウラシル」も、副作用の少ない「プロドラッグ」というタイプへの改良が行われました。その一つが、日本で開発された「ティーエスワン(TS-1)」です。1999年以降、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなど多くのがん治療に使われており、現在も国内の抗がん剤市場で年間売り上げ9位を記録するヒット作です。

 ただ、改良されても、副作用はつきものです。今回は目の副作用に着目します。

「涙目」確認、治験段階の5倍以上

 「ティーエスワン(TS-1)」が市販された後の調査では、16パーセントの患者に「涙目」の症状がありました。薬の承認を目指すための治験段階での2.8パーセントから、一気に5倍以上になりました。

 治験では、血液検査の結果や、食欲不振、嘔吐おうと、下痢といった目立つ不調には患者も医師も注目しますが、「涙目」については「大したことのない症状」であるとして、軽視しがちです。治験薬を処方する医師は眼科医ではありません。患者がよほど強く訴えない限り、報告しないでしょう。

 とはいえ2.8%も「涙目」の副作用報告があり、添付文書にも記載されました。市販後の調査では、多分医師がこの症状にも注意していたので、発症が確認される頻度が一気に上がったと考えられます。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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