フォーラム「がんと生きる」
イベント・フォーラム
[フォーラム「がんと生きる」 「こころとからだ私らしく」](上)患者に寄り添う治療
「こころとからだ 私らしく」をテーマにしたフォーラム「がんと生きる」が2月25日、大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで開かれ、約770人が参加した。医療技術が進歩し、がんの新しい治療法や薬が生まれている一方で、患者は治療による副作用や、治療と仕事の両立などで様々な悩みを抱えている。患者一人一人に合った治療とケアをどう考えていくべきか――。患者、医師らが話し合った。
【主催】 読売新聞社、NHK厚生文化事業団、NHKエンタープライズ
【後援】 NHK大阪放送局、厚生労働省、大阪府、大阪市、大阪府社会福祉協議会、大阪市社会福祉協議会、大阪府医師会、同府歯科医師会、同府薬剤師会、同府看護協会、天王寺区医師会、同府民生委員児童委員協議会連合会、大阪市民生委員児童委員協議会、大阪府がん診療連携協議会
【特別協賛】 ツムラ
【協賛】 アデランス
◇ 松浦成昭 さん 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター総長
1976年、大阪大医学部卒。同大医学部教授などを歴任。2014年、大阪府立成人病センター総長。病院名変更に伴い、17年から現職。外科学や病態学を研究している。
◇ 山岸伸 さん 写真家
1950年、千葉県生まれ。ポートレート撮影を中心に広告から雑誌グラビアまで幅広く活動している。写真集は400冊を超える。2008年冬、慢性骨髄性白血病と判明。
◇ 山本和美 さん がん患者支援団体「Worker and Cancer」代表
2005年、33歳で乳がんの告知を受ける。その後、主治医が主催する患者会の運営助手として、ボランティア活動を開始。17年、支援団体を設立した。
◇ 山口竜司 さん 山口診療所院長(大阪府河内長野市)
1990年、大阪市立大医学部卒業。同大病院などを経て、99年から診療所を開業。在宅漢方研究会を作り、漢方を使った在宅緩和ケアの啓発に取り組む。日本在宅医学会認定専門医。
◇ 市原香織 さん がん看護専門看護師
2011年、がん看護専門看護師の資格を取得。16年、京都大大学院へ進学。がん体験者と家族が集う地域コミュニティー「ともいき京都」の主催メンバー。
◇ 関孝子 さん 特定社会保険労務士
2008年、開業登録。12年、NPO法人「がんと共に生きる会」(15年から理事)に参加。17年、大阪府社会保険労務士会常任理事、同会「がん患者等就労支援特別部会」部会長。
◇ コーディネーター 町永俊雄 さん 福祉ジャーナリスト
1971年にNHK入局。福祉番組のキャスターを経て、2011年から現職。
手術や薬 進歩
町永 そもそもがんとは何でしょうか。
松浦 私たちの体はいろいろな細胞から成り立っています。その細胞がどんどん増えてしまって、自分勝手な振る舞いをするものががんです。
がん細胞ができるのは、遺伝子の異常が原因です。喫煙や食生活などの影響で遺伝子は傷ついてしまいます。それが積もりに積もってくると、勝手な振る舞いをするがん細胞ができます。がん細胞が増えるスピードはとても速く、転移もします。例えば、胃に出来たがんが肺や脳などあちこちに移動し、そこでまた大きくなります。
町永 どんな治療がありますか。
松浦 手術、放射線治療、抗がん剤などの化学療法が3本柱です。がんが増え始めると、抑える手段がないので手術で切り取る方法が取られてきました。放射線治療は、放射線のエネルギーで焼き殺すイメージですね。この二つの方法は、患部を切ったり焼いたりするわけで出来れば避けたい。そこで薬で治す方法、すなわち抗がん剤による治療が開発されてきました。
がん医療は、この20、30年でものすごく進歩しました。手術は非常に合理的になって、患者への負担が減り、放射線はがんの所だけに照射できるようになりました。いろいろな種類の抗がん剤が登場し、治療成績がめざましく向上しました。
最近では、副作用によるつらい症状や不安な気持ちをいかにして取り除くかが重要だと考えられています。がんになっても患者が普段と同じように暮らしていくにはどうしたらいいかを病院側も真剣に考える時代になりました。
町永 治療で誤解があるのは「標準治療」という言葉。「標準でなく、特上治療で」とお願いしたくなります。
松浦 標準治療というと、平均的な治療というイメージがあると思います。長年の研究の結果、根拠に基づいた、現時点でベストな治療ということです。
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