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無痛分娩 安全策は(上)厚労省研究班が提言案

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無痛分娩 安全策は? 厚労省研究班が提言案

無痛分娩を巡る事故の再発防止を訴え、記者会見する家族。重い障害を負った母子も同席した(2017年7月、京都市で)=尾崎孝撮影

麻酔と出産、兼務容認 診療所に配慮

 出産の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩(べん)」の安全対策を検討していた厚生労働省研究班が、人員・設備面で望ましい体制や、情報公開について示した提言案をまとめた。3月末に最終的な「提言」を発表する予定だ。重大事故が相次ぎ発覚したことでつくられたものだが、安全性の向上につながるのか。その実効性が問われている。

 無痛分娩など産科麻酔を巡る重大事故は、昨年春以降、大阪、兵庫、京都などで次々に発覚した。厚労省は無痛分娩に関する研究班を設置。メンバーは、日本産婦人科医会や日本麻酔科学会などの関連団体から派遣された産婦人科医、麻酔科医、助産師、医療安全の専門家、市民団体代表で、昨年8月から議論を重ねてきた。

安全に実施するための対策を提言も、強制力なし

 提言案は、無痛分娩を安全に実施するための体制として、麻酔を担当する医師は定期的に研修を受けることや、麻酔をした後30分は患者の近くにとどまり、産後3時間までは何かあれば5分程度で駆けつけられるところにいることを提案。酸素バッグなど緊急時の蘇生に必要な医療機器をすぐに使える状態で備えておくことも挙げた。加えて、医療機関のウェブサイトなどで実施件数を公開するよう促している。

厚労省研究班の提言案のポイント

(実施施設に求める体制)
・蘇生に使う酸素ボンベなどの医療機器を使える状態で管理する
・麻酔を担当する医師は定期的(2年に1回程度)に研修を受講する
・麻酔を担当する医師は、麻酔後30分は近くに待機。産後3時間までは緊急時に5分程度で駆けつける
・チームの責任者の医師、麻酔を担当する医師、出産を担当する医師は場合によって兼務できる
・ウェブサイトなどで実施件数や説明文書、麻酔の方法などを公開する 

(関係学会・団体に求める役割)
・無痛分娩を行う医療機関を登録する仕組みを作り、そのリストを公開する
・産科麻酔の研修体制を作る
・技術に習熟した医師の認定制度の是非を検討する
・具体化を進めるため新しいグループを設置する 

(国に求める役割)
・無痛分娩の事故情報を収集・分析する方法を検討する
・患者・家族からの事故情報を活用する仕組みを検討する 

(社会に求める役割)
・無痛分娩への理解を深める
・妊産婦は適切に情報収集し、主治医と相談し方針を決める

  ただ、この対策に強制力はなく、この通りにするかどうかは各医療機関の考え方次第だ。提言案では、無痛分娩の麻酔と出産を同一の医師が兼務することも容認された。一連の重大事故の多くが医師1人のもとで行われていたため、安全性を懸念する声があったが、提言案は医師1人でも無痛分娩ができる内容になっている。無痛分娩の麻酔に習熟した医師を認定する制度の創設も検討のそ上に載ったが、本格的な議論は先送りされた。

 議論の過程では、麻酔科医のメンバーから、「安全な体制が整えられない医療機関は無痛分娩の実施を控えてもらうことが必要」「ある程度の安全基準を守れないところは無痛分娩をできないのではないか」といった意見が出ていた。これに対し、産婦人科医のメンバーは難色を示した。人員や設備の条件を厳しくすると、無痛分娩ができる医療機関が減り、リスクの高い妊婦を受け入れなければならない大病院に、無痛分娩を希望する一般の妊婦までが集中して、本来の役割に支障が出てしまう、というのだ。

実情は「無痛分娩は集客の手段」 アンケートでは十分な情報集まらず

  日本では、出産の半数が診療所で行われている。無痛分娩が普及している海外の先進国では、出産は大病院で、産婦人科医、小児科医、麻酔科医などが常駐する環境で行うのが一般的であることを考えると、日本の出産事情は特殊といえる。日本産婦人科医会が昨夏に行った初の実態調査では、昨年度に国内で行われた無痛分娩の半数以上が診療所での例だった。

 ただ、複数の産科開業医や助産師は取材に対し、「無痛分娩は診療所にとって重要な集客手段になる」と実情を打ち明けている。提言案の内容は、そんな診療所の事情に配慮した結果でもある。

 研究班では当初、無痛分娩の安全性評価もする予定だった。日本産婦人科医会による実態調査の結果を使い、どういう場合にトラブルが起きているのかなどを詳細に分析して、事故の再発防止に生かそうと考えていた。しかし、任意のアンケートでは十分な情報が集まらず、細かい分析まではできなかった。現時点では無痛分娩が普通の出産と比べてリスクが高いかどうかの確かな判断は難しく、さらなる調査が必要とされている。このため、提言案は国に対し、事故の情報収集・分析制度の創設を求めた。妊産婦や家族からの情報を直接、受け付ける窓口の設置も提案している。

 研究班の提言を受け、4月以降に新しい専門家のグループが、研修制度をどうするかなど、対策の具体化を検討する。妊産婦が安心できる体制が整うまでには、さらに時間がかかりそうだ。

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